Toxic・Romance

片桐馨は甘やかし方を覚えた

 まどろみの中で目が覚めると、視界いっぱいに白く清潔なシーツと、隣で眠る片桐さんの顔があった。

「(……綺麗……)」

 整いすぎた睫毛の影、通った鼻筋。無防備に閉じられたその瞳。いつもは冷徹な雰囲気をまとう彼が、今はただのにんげんだ。

 ふふふ、と頬が緩むのは必然だった。身をあずけるだけのシーツは滑らかで、片桐さんと同じ良い匂いがした。

 ──……これ、夢かな?夢だったら、醒めなきゃいいのになあ……。

 そっと指を伸ばし、柔らかな黒髪に触れる。それから、耳の輪郭をなぞり、首筋の熱を人差ゆびの先端で確かめていると、彼の長い睫毛が震えた。

「……ん……」

「(あ、起きちゃった……?)」

 慌てて指を引っ込めようとしたけれど、それより早く、大きな手が私の腰を引き寄せるほうが先だった。

「おはよ」

 低くかすれた朝の体温をまとった声に、胸の奥がきゅんと疼いた。昨日、何回も何回も、耳元で聞かされたあの声ととても良く似ていたからだ。
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