Toxic・Romance

 すると夜永さんは何か納得したように頷いた。

「なるほど、月島のお友達にとってはセフレじゃないのね。でもたぶん、その人に恋をしても未来はないかもね。相手は楽な関係を壊したくないから、今の形を選んでるんだし」

「(……そうなんだ)」

 未来なんてそんなもの、期待してはいけないとわかっていたはずなのに。

「すみません、ちょっと、失礼します」

 私は逃げるように席を立ち、喫煙所へと向かった。ここは片桐さんの匂いがする場所だから、無意識のうちに足が向かっていたのかもしれない。

 スマホを取り出すと、通知が入っていた。

《またいるの?》

 見透かしたような短いメールだった。灰皿の前に立つ片桐さんの背中が見えた。振り返ることもなく、彼は器用に紫煙をくゆらせている。

 私は震える指先で、画面に文字を打ち込んだ。

《まだ契約は破棄されていませんよね》

 セフレでも恋人でもなく、私たちはあくまで契約関係だ。

 スマホを握りしめたまま、彼の背中をじっと見つめる。 ふ、と彼がこちらを振り返った。逆光で表情は見えない。

「誰かスマホ鳴ってね?」

 すると、別の誰かが言った。
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