Toxic・Romance


「もしかして、例の“お友達”の話?」

 そうだ。夜永さんには、自分のことを伏せて相談した過去がある。そのことを覚えてくれていたのだ。

「そうです!そのお友達のことで、悩んでまして」

 息を吹き返したように意気揚々と語ると、夜永さんは「ふうん?おねえさんにお話してごらん?」と、頼もしい限りだ。

「なに、月島のお友達ってこないだからセフレのことで悩んでるの?」

「セフ……え?」

 あまりに直球な単語に、心臓が跳ね上がった。動揺を隠そうとカップを手に取ったけれど、夜永さんは冷めた顔で続けた。

「だって、その距離感、セフレでしょ? まあセフレがいちばん楽だよね。束縛されないし、する必要もない。会えば恋人らしいことをしてくれて、一瞬でも寂しさは紛らわせることができる」

「(……そうかも)」

 否定する言葉が出てこなかった。付き合ってほしいなんて言っていない。ただ、触れてほしかっただけ。  

 私は力なくデスクにつっ伏した。

「セフレかぁ……」

 改めてわたしたちを形容する呼称をなぞる。なんて脆くて、なんて有り触れた言葉だ。一瞬でも特別だって勘違いした自分が恥ずかしい。片桐さんは元々そんな関係を望んでいたんじゃないか。
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