Toxic・Romance
「だから、どうやって分からせるか考えてる」
「……」
「ずっと考えてるんだよ。でも、ひとつしか思いつかない」
ふわりと、彼の香りが近づく。長い指先が、私の頬を包むように触れた。その熱から逃げられなくて、私はただ、彼の瞳の中に吸い込まれていく。至近距離で見つめられた瞳には、鋭さは微塵もなかった。
「ねえ、夕結ちゃん」
私の名前を呼ぶ声が、これまでにないほど柔らかく、甘く、ひどく切ない響きを帯びていた。
「俺と恋愛しようよ。正しい恋愛ってやつ」
絡み合う視線の中で、彼がゆっくりと顔を近づけてくる。それはまるで宣戦布告のようにも聞こえた。
あなたが私という重力に捉えられたのか。それとも、私があなたの引力に、すべてを明け渡したのか。
もう、どっちだってよかった。
「……いいんですか? 私、恋愛経験値ゼロのままですよ」
精一杯の強がりを言うと、彼は「だから良いんだよ」と、優しく笑って私の額を自分の額にこつんとぶつけた。
「片桐さん」
「うん」
「……片桐さん」
「うん」
「馨さん」
「……」
「私、馨さんのこと、好きでいていいですか」
胸の奥底に閉じ込めていた気持ちを吐き出した。すると片桐さんはどんな表情よりも柔らかくはにかんだ笑顔を浮かべるから、無性に泣きたくなった。