Toxic・Romance
「片桐さんの恋愛観は、相変わらず、ですか」
煙草の匂いが混じる空気の中、私はまっすぐに片桐さんを見つめたまま問いかけた。前に聞いた時は、平気だった。だからこそ彼をモデルに小説が書けたし、彼を利用することに罪悪感もなかった。
「前は、大丈夫だったんです。チグハグだけど、勝手にこんなこと始めた私が何言ってるのって感じですけど。……片桐さんに、他に好きな人がいることも知ってるし」
喉の奥がぎゅっと窄まる。伝えたい言葉はもっと他にあったはずなのに、結局、子供のような独占欲ばかりが口をついて出た。
「でも、今は……もっと、私に時間を使ってほしいって思ってます」
口にすれば、なんて勝手で傲慢な願いだ。
「使ってるよ」
嫌われるのを覚悟で絞りだした言葉に、片桐さんはあまりにも呆気なく答えた。
「え……」
「俺の時間は、月島夕結にしか使用してない」
心臓が大きく跳ねるのがわかった。その言葉が、耳の奥で何度もリフレインして熱に変わる。けれど、臆病な私はまたすぐに保険をかけようとしてしまう。
「……誰にでも言ってるなら、恨みますよ」
「言ってないよ」
彼は迷いなく言い切って、私との距離をまた一歩、詰めた。
「誰にでも言わない。……あんたにしか、言ってない」
「……本当に?」
「信用ないね、俺は。まあ、当然か」
自嘲気味な低い声を聞かせた片桐さんは視線をゆるりと泳がせた。あの日、私に著作権をチラつかせ、余裕を垣間見せていた彼はもう何処にもいない。