Toxic・Romance
生まれて初めて彼氏ができました。
それがまさか、同じグループ会社の、一番苦手だと思っていた人で――今、この世界で一番大好きな人になるなんて。
オフィスの喧騒の中、私は締め切り間近の記事を仕上げるべく、猛然とキーボードを叩いていた。……はずだった。
「月島って、本当に分かりやすいよね」
肩を叩くように降ってきた夜永さんの声に、指先が派手に空振った。
「なんでもないですよ!? 仕事に集中してるだけです!」
「へえ?その割には顔、真っ赤だけど」
「う、ぇっ!?」
ニマニマと笑う夜永さんから逃げるように、私は机に置いたスマホに視線を落とした。新着通知が見えて、スマホに触れる。
《腹減った》
片桐さんだ。それも朝から無茶振りした人とは思えないほど日常的なメールだ。
《お疲れ様です。お昼までもう少しですよ!がんばりましょう!》
《ゆうゆ食べたい》
更新された文字に、脳内がフリーズするのはおよそ必然。
《“夕結“と”食べたい”ですよね??》
片桐さんはなんとも言えないスタンプを間に挟み《昼休み、社食》指示のような予定を受け取る。
「(……絶対わざとだ、この人)」
スマホをデスクに伏せる。けれど、伏せたはずの視線の先で、どうしても頬がゆるんでしまうのを止められない。