Toxic・Romance
かつての私なら、片桐さんの無機質な呼び出しに怯えていただろう。今はその短すぎる文字列の中に、彼なりの焦燥や甘えが透けて見えるような気がして、胸の奥がくすぐったい。
早く会いたい。けれど、あまりに余裕のない自分を悟られたくなくて、私は席を立つタイミングを計る。
けれど、まだお昼まで20分もあるじゃないか。手鏡で自分を覗き込むと、まん丸の瞳と出会う。童顔がずっとコンプレックスだったので今日はちょっと大人っぽいメイクにしてみた。
慣れない切れ長のアイラインは、個人的に上手に描けたし、ヌーディな色のリップもBAさんおすすめということもあってよく馴染んでいる。今日の私のビジュは個人的に高評価。
指先で乱れた髪を丁寧に整え、意味もなくリップをもう一度重ねる。
「やっぱり月島って分かりやすいよね〜。今、頭の中ピンク色でしょ」
夜永さんの見透かした声が届き、ばくん!と心臓が跳ねた。
「全然ですよ!? 私、ミステリアスで分かりにくいって、ひょ、評判なんですから!」
「……そう」
その一ミリも信用していない目が痛い。すると、タイミングよく正午を告げるチャイムが鳴った。
「じゃあ、お先しますね」
矛盾する心に急かされながら、私はあえて、ゆっくりと席を立った。少しでも、ミステリアスを演じるためにだ。