Toxic・Romance
 



「(……一緒に、)」

さらっと言うから、意味が遅れて胸に落ちてくる。

「……誘い方、ずっと慣れてますね」

 思わずこぼれ落ちた言葉に、片桐さんは少しだけ眉を上げた。

「慣れてるように見えるか」

 片桐さんは私の手のひらに鍵を乗せた。同じブランケットで二人の体温が溶け合う中、片桐さんは困惑した笑みを浮かべた。

「初めてだよ。こんなの」

 これはきっと引力。あらがうことのできない重力に、静かに軌道を奪われている。

 落ちている自覚はなかった。ただ気づけば、あなたの周りを回っていた。いつまでも、あなたの隣にいたいと思った。

 近づきすぎれば燃え尽きると知っているのに、離れようとすると胸の奥がきしむ。

 終わらなければいいと思った。言わなければ終わらないと思った。

 愛が引力の誤作動なら、修正できるはずだった。けれどこれはあまりにも正確で自然なもので。

 確信はなにひとつない。私の心臓の真ん中が、そうだと言っている。

 恋は落ちるものではなくって、選んだつもりのない場所に、いつのまにか身を委ねてしまうことだ。




 ───ほらね、あなたの隣にも、きっといつの間にか。



TOXIC・ROMANCE【完】
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