Toxic・Romance

 怒りに身を任せていると、最後の一行で思考が止まる。

 打ち合わせの件で話したいことがあるから、金曜の18時、エントランスのグリーンアート前で。

 片桐
────

 忘れ物を届けるみたいに、添えられた文面。

「……仕事の話、だよね……」


 自分に言い聞かせるように呟いた声は、モニターの光に吸い込まれて消えた。


 はあ、と大きなため息を吐いて、思考回路を一旦リセットするためにスマホを開いた。すぐに執筆ページが目に入る。評価数、ブックマーク、コメント、自分史上、いちばんであることは明白だ。

 夜永さんの言葉が、少し遅れて胸に落ちる。

 無理してない?

 してるに決まってる。

 創作も、仕事も、そして、あの人との約束も。

 私はもう一度、チャットの名前を見つめた。

 業務連絡の皮を被ったその向こうで、きっと片桐さんは余裕の顔で笑っている。

「……打ち合わせ……」

 小さく呟いたその声は、誰にも聞かれないはずなのに、逃げ場を失ったみたいにデスクの上で消えた。


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