Toxic・Romance
ぽちゃん、と深い泥濘に落ちそうになるのを理性が必死に持ち堪える。
「(ああ、なるほど)」
そのうえで、私は分析していた。
恋人のような空気感さえ片桐さんにとっては何の意味もないことだろう。獲物を捕まえるための作業だから。
けれど、この人がいくらクズでも、二人きりの時はこんなに激甘だったら、それでも良いって思う人続出するだろうなあ……。
片桐さんの手のひらの上であれば、喜んで踊る女の子の気持ちがわかる。
「……私、頑張るので。片桐さんも、ちゃんと私に情報を提供してくださいよ!」
「情報?」
「私、片桐さんと一緒にいると、悔しいけれど、妄想が捗るんです。だから……」
私は膝に力を込め、宣言するように彼を見上げた。
「片桐さんに、恋愛の素晴らしさを、私の文字を通して伝授します!」
「うける。なら頑張って」
彼は可笑しそうに目を細めた。きっと、私がどう足掻いても片桐さんに響くことはないと思う。それでも、どうしても、愛を信じないこの人に、愛を知ってほしいと願ってしまった。