Toxic・Romance

片桐馨は降伏を覚えた

 《すっごく面白い!今一番楽しみな小説です》

 ピロン、と届いたメッセージを見て、一人、ベッドの上で足をバタバタと動かした。

「(う、うれしい……!!)」

 もう一度、その文字を眺める。ほっこりとした幸福で胸の中が満たされるのを感じた。

 片桐さんのおかげで、ぽきりと折れていた私の創作意欲はぐんぐんとうなぎ登り。書くことが怖かったはずなのに、今は指先が物語を追い越していく。それが作品にも顕著に表れているようで、増え続ける感想の数が、確かな証拠として目の前に並んでいた。

 片桐さんにもお礼言わなきゃ……。

 私にとって恋愛は、誰かのかたちをしていればそれでいい。


 スマホを胸に抱いたまま、不意に、天井の白い模様が視界の端で歪んだ。高揚していた心臓が、急激に熱を失い、重苦しい鉛に変わっていく。

 私の書く物語は、いつだって誰かと誰かの幸福な結末で終わる。現実もそうだ。その輪の中に「私自身」がいたことは、一度もなかった。


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