Toxic・Romance
例えば友人が三日で恋人が作ろうと、狼狽えない。さすがだ。価値観は全く合わないけれど、書くならば徹底的に傾けなければ。
スマホのメモアプリに記憶を落としていると、突然、視界の端で手がにゅっと伸びて、私の新品の煙草を奪ってしまった。
「へっ」と、思わずま抜けた声をだせば、それは片桐さんだった。
「吸わないなら、ちょうだい」
「いいですけど……」
人が居るのでは?と、周囲を見渡す。しかし片桐さんの同僚らしき人は帰ったのかいなくなっており、喫煙所は私と片桐さんの二人だけになっていた。
──……いつの間に。
「それより、彼女できたんですね」
「一応」
個人的には重要な質問だったのに、メールとおなじ、かなり塩対応な返事をもらう。無視よりもいいので、妥協する。
「てか、盗み聞きする必要ある?俺から直接聞けばいいじゃん」
盗み聞きとは人聞きの悪い。……確かに、やってる事は盗み聞きだけどさ。分かって泳がせているのは片桐さんだ。
「こういうのは、雰囲気が大事じゃないですか!」
と言いつつ、このご時世、喫煙所を利用する人は少ないし静かだ。さらに言えばパーテーションで仕切られているからプライバシーも守られている。執筆するのに良い。
「今週の金曜、空けてろよ?」
突然だった。片桐さんは私の盗み聞きを知った上で、あの契約を持ち出す。