一等星センセーション―日陰女子、イケメンアイドルになります!?―
――――……
「――はい、ダメ」
Aメロに入ってすぐ、私のパートがSEIKOさんにバッサリと切られた。
曲が止まって、場が静かになる。
貼り付けた笑顔をゆっくりと解除する私を、SEIKOさんの厳しい目が貫いた。
「歌の主人公に寄せようとした?悪いけど、合ってない。
それじゃ見てる人は“千景”にときめかない」
言葉がズシンと重く胸に刺さる。
歌のストーリーや主人公になりきる。
恋がわからなくても、想像で補う。
それの何がいけなかったの?
「千景、あなたは恋の解像度が低すぎる。」
床に落ちた視線が、正解を探して彷徨う。
SEIKOさんが、見兼ねたように小さく息を吐いた。
「もっと誰かに恋情を向けることを想像しなさい。
そしたら、そんな風にお行儀よく笑えないはずよ」
「――……はい……」
返事、したけどピンときてない。
むしろもっと答えが遠のいた気がする。
「今すぐ直せとは言わない。けど、できるだけ早くあなたの正解に辿り着きなさい。
――恵まれた環境は、遠慮なく利用することね」
フッと笑うSEIKOさんの顔は、挑発的で珍しく悪戯っ子のように無邪気だった。
SEIKOさんの隣に立っていた宇都さんが慌て出す。
南は面白がるようにニヤついている。
ユウキは眉をひそめ、蓮はきょとんとして、昊だけが無表情のまま瞬きをした。
無意識に全身に入っていた力が一瞬抜ける。
言葉の裏を考えた。
恵まれた環境――つまり、異性だらけのこの環境って、こと?
(……いやいやいや!無理。無理だよ?)
気づいて、また肩に力が入った。
後ろで南が堪えきれず噴き出した音がする。
だって、みんなは仲間だし。
私は、男としてここにいるわけだし!
「恋情を向けろ」なんて言われても――
そんなの、いちばん向けちゃいけない相手ばっかりじゃん!
「もう一度」と、SEIKOさんは平然と空気を戻していく。
曲に込める感情はまっさらなまま。
歌と振りだけを頭に詰め込んでレッスンは一区切りした。