ワンルーム、きみと小さな海をみる
♾.




それからアオさんは慣れた手つきで処置を済ませた。


相変わらず身体はボロボロだったけれど。

少なくとも、心はようやくいつもの調子を取り戻したようだった。




「さてと、もうここにはいられないな」



バスタブの中からその姿を見つめていたわたしは「わたしも」と小さく声をかけた。




「……わたしも、一緒について行っていい?」

「なに言ってんだ。当たり前だろ」



差し出された手を見つめる。


この先、きっと楽ばかりな道じゃない。

波のように困難が押し寄せて、転んでしまう日もあるだろう。


それでも、わたしはその手を迷わず取った。





「なあ」


「ん?」


「長い付き合いになりそうだから名前、教えろよ」


「◇=だよ」


「だから何語なわけ。お前の名前だけ聞き取れねーんだわ」


「好きに呼んでくれていいよ。ふふ、わたしはあなたの本名知っちゃったけど!」


「……クソ、あいつらか。俺だけ知られてるってのはなんか癪だな」



どんな名前でも、あなたであることに変わりはない。

わたしは水のある所じゃないと生きていけない。


それでもアオさんのそばでなら。




わたしはきっと、どこでだって息ができる。






                      fin.

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