『愛をください』─ 叶わぬ想い ─


23 ◇義実家にはもう帰らない


これまでだと、例年31日の午後から夫の実家へ向かうのだが、浮かれて部下の女性との
付き合いをやめないそんな夫の実家へ帰るなど、阿保らしくてやっていられない。

自分に嫌がらせをしている相手の家族に、とてもじゃないけれど愛想を振りまく
なんてことできない。

そう、できるわけがない。

そんなわけで――――
由香は前々から、反省の色を見せない夫には辟易としていて、新しい年からは
夫の実家へ帰らないと決めていた。


          ◇ ◇ ◇ ◇

昨年までなら、帰省するための準備に向けて、息子たちを追い立て、自分にも
帰る支度を促していた妻の由香が、昼食を終えた後になっても自分の部屋にしている
和室に籠ったまま出てこない。


『和室に、荷物をまとめているのだろうか?』
そう思ってみたり……。
しばらく、和室の前をうろうろしていたものの、埒が明かないため
正義は意を決して由香に声をかけた。

「由香? 何時に家を出る?」

「そのことだけど……」

と言ったきり、由香から続きの言葉は出てこなかった。


しようがなく「開けるよ?」と声を掛け、正義は襖をおそるおそる開けた。

襖を開けて視界に入って来たのは、布団に横になっている由香の姿だった。

「調子、悪いのか?」

「うん、風邪ひいちゃったみたい。
申し訳ないけど今回は私抜きで子供たちと帰省してくれないかしら」

「そっか。分かった」

年末から|自分(正義)の実家に帰省することを、今まで一度も欠かさずに
努めてきた妻。
そんな律儀な妻に、毎年準備も何もかも任せきりで、手伝いもせずにきた正義だった。
もちろん、手伝えといわれれば手伝っただろうとは思う。

そんな風だったから、女性関係のこともあり、それでも無理をしてまで
帰省しろとは言えず、正義はそれをあっさりと受け入れた。

……というか、受け入れるしかなかったというのが、本音。

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