『愛をください』─ 叶わぬ想い ─
29 ◇心の中からシャット・アウト


 正月休みの最後の日は、トランプの七並べにモリモリ盛り上がり、自宅では
出さないような大きな声を兄弟で何度も出して、息子たちはゲームを楽しんだ。

 美代志くんも結構楽しんでたみたい。
 でも、結構冷静だったな。

 そりゃあそうだっ。
 同じ十代でも大人と子供だもんね。

 悟はあと6年もすれば、今の美代志くんと同じ年になる。
 どんな青年になっているかしら、楽しみだわ。

 トランプのあとは、遊戯王カードゲームを3人がPlayして楽しみ、
私は彼らの様子を側で眺めていた。

 そして、息子たちは名残惜しそうにしたけれど、21時半にお開きにして
帰宅した。
 しようがないよね。
 だって――――
 翌日には、私と美代志くんは仕事、そして子供たちは学校があるのだもの。

          ◇ ◇ ◇ ◇


 帰宅しても、まだ夫は帰っていなかった。

『やっぱりね』

 どこをほっつき歩いているのやら……だ。

 明日の朝、起きられなくても起こしてなどやらないわ―。

 『お仕置きよっ』

 くだらない独りごとを繰り出す自分。



 それから――――
入浴を済ませ一旦布団に入ったものの、途中でトイレに行きたくなり、
私は起きた。

『さぶっ』

私は室内用にしているゆったり目のカーディガンを羽織り、部屋を出た。

 お手洗いに行くには、廊下を通らなければならないのだが……
帰宅したばかりの夫と、廊下で出くわす形になる。

「うわっ」 私は驚いて、大きな声を出してしまう。


「ただいまぁ~驚かしちゃった? ごめんね」

「びっくりしたぁ~。遅かったのね」

「いやぁ~、もっと早くに帰るつもりだったんだけど、同僚がさ、もう一曲もう一曲って
言ってなかなか終わりにしないんだよね。参ったよ~」

「明日は、会社なのにね。困った人ね」

「ほんとに……困ったヤツだよ」

「何人で歌ってたの?」

 別に訊かなくてもよかったんだけど、親切心で訊いてあげた。
(うっそ()。おちょくってみただけ)

 
「えっと、あれっ? 俺、出掛けに言ってなかったっけ?」

「あれっ? 3人って言ってなかった? 」

「えっ、さ、3人? そんなこと言ってた?」

「違ったっけ、2人って言ってたんだっけ?」

 ちゃんと答えられない夫の姿に、あの女とふたりでいたのがバレバレ。


 帰りが遅くなり、やたらと同僚が同僚が……と、会社の同僚と会っていたのだと
強調する夫。

 出ていく時もだけど、そんなにバレバレの言い訳なんてしなくても……。


 もう誰もあなたたち2人の親密な付き合いを妨害しようなんて思っている
人間はいないわ~。

 私が、いつまでもあなたが親しくしているあの『満島まほり』とかっていう女のことを
嫉妬しているとでも思ってるわけ?  
 
 そんな価値あなたにあるとでも?

 ほんとに、お目出度い人ね。
 とっくの昔に、あなたなんて私の心の中からシャット・アウトしてるんだから~。

 
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