『愛をください』─ 叶わぬ想い ─
44 ◇恩寵

「美代志くん、悪いけど見てやってくれないかなぁ。
 もう私、小学生でも高学年になると難しくて、頭痛くなっちゃう」

「いいですよ……」

「ありがとー。助かる~」

❀広縁から部屋に上がっていく美代志くんの背中を見送っていると、
海風がそっと私の頬を撫でた。

🎐 チリリン、と風鈴が鳴る。

 テーブルの端と端に座り、課題をやっつけている息子たち。

 彼が圭と悟を左右に見据えた位置に座り、左側の圭に話し掛ける。
 そして、圭の手元を覗き込み、勉強を見てくれる。

 目の前で繰り広げられる光景に、目が離せない。

❀部屋の中は、3人の若者たちから立ち上るまっすぐなエネルギーで満ち溢れ、
そのエネルギーは日の光と相まって、散りばめられた金粉のように輝いて見えた。

 1年の中で1番暑い季節なのに、庭先も、そこから見える部屋の光景も、
日向のように暖かくのどかで、私はそれ(暖かく感じる光景)を取りこぼすことなく享受した。



 世間の尺度で測るとするなら、本当は世界一不幸な奥さんかもしれないけれど……。

 こんなにも素晴らしい幸せを受け取れるなんて、今、手中にある
宝物(贅沢)を、私はとても愛おしく思った。

 マザー・アース(Mother Earth)……これはあなたから私への恩寵なのでしょうか。

私は幸せです。
私は恵まれています。
私は愛で満たされています。
私を支えてくださり、ありがとうございます。

 たぶん――――

 愛はこの世でもっとも優しい触媒……。

 しばらく庭先に立ち、愛おしい光景に浸っていたら、圭が美代志くんに
何か囁いたみたいで、次の瞬間、3人揃って私を見た。

「「「わぉ~」」」

 そのあと、3人が一斉に広縁へと飛び出してくる。

最初に圭が
「お母さんが、観音様になったー」と叫んだ。

「何~? 何なの一体……」

「母さん、金色のオーラが出てるよ」
と、悟が教えてくれた。

「えっ、うそっ」

 もちろん、自分では分からない。


「由香さん、出てますよ。ものすごい金色オーラ。女神さまみたいだ」
 美代志くんが息子たちと同じように教えてくれる。

 ――――で『女神さまみたい』ですって。照れる~。

 それからしばらくのあいだ、息子たちは私を『女神〜、女神〜』と
囃し立てた。

 その都度、苦笑するしかなかったけれど――――。
 もしかすると、本当に何か(大いなる存在)が降りてきていたのかもしれない。

 霊能力のない私には、確かめようもないのだけれど。


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