『愛をください』─ 叶わぬ想い ─
60 ◇悩ましいこと、この上ない

「お待たせしました。

やはり現在すでに成婚に向けてお話が進んでいるようなので、様子見をしながら
チャンスがあるようでしたら、鍋本さんへ水島さんのお気持ちをお伝えさせて
いただきたいと思います。


お時間を少しいただくような形になりますので、水島さんのお気持ちが万が一
変わられた時は、早めにご連絡いただけましたらと思います」



「すみません、お手を煩わせて。宜しくお願い致します」


『分かりました。すぐにお伝えしますね』
という返事を期待していたため、少しガッカリしたものの、少しだけあるかもしれない
縁を頼りに気持ちを切り替えて、まほりはその場を後にした。




    ―――― 水島まほりの帰った後で ――――

よく鍋本の資料に目を通してみると、今回は彼のほうがお相手の女性から
申し入れをされ、それを受けての交際のようだった。

それで、ますます山本は頭を悩ませてしまう。

ただ、鍋本から、お相手の里中美代子との結婚を決めたという報告は
まだ受けていない。

話を持っていくなら、早いほうがいい。

山本は鍋本がじっくりと考え、反応しやすいようにメールでそれとなく
彼の本意を確認してみようと、連絡を入れてみることにした。


           ――――――――

『鍋本様

いつも大変お世話になっております。
[結婚相談所・桜咲く]でございます。
その後、如何お過ごしでしょうか。

お相手からの申し入れがあり、お付き合いが始まり
ましたこと、おめでとうございます。
お相手の方とは、つつがなくお付き合いが進行されて
いることと思います。

そのような中、お伝えしてよいものか迷ったのですが、
お伝えしないでいるのもまた、あとから気になってしまい
そうで、ご連絡させていただきました。

もし、以前鍋本様が申し込みをされた女性(ひと)から
逆申し込みがあったとしたら、どうなさいますか?

まだ、今のお相手との成婚が決定的ではない場合、
よりお好きな(かた)、気になるほうの(かた)を選べます。

わたくしも、この件をお伝えするべきか、それともしないべきか、
とても悩んだ末にご連絡させていただいております。

お心が決まりましたら、ご一報いただけますよう
宜しくお願い致します。

 [結婚相談所・桜咲く] / 山本百合子


















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