MR(医薬情報担当者)だって恋します!

 話していると食器を新聞紙で包む手が止まってしまう。私たち二人の間をクッキーが行ったり来たりしていた。

「ねえ、香澄はどうして彼と結婚しようと思えたの?」

 香澄が本棚から本を段ボールに詰める手を止めた。

「どうして、かあ。そうねぇ、やっぱり好きだから。この人とならこの後の人生ずっと過ごせるかなと思えたのよね」
「今後の人生……」
「それにしても理緒はもったいないことしちゃったよね~! 私ならドクターのほうとるなあ!」

 私は香澄の言葉に、

「もう! またそんなこと言って……。だったら、もし香澄、ドクターにプロポーズされてたら、今の彼のプロポーズ断った?」

 と私は意地悪な質問をしてみる。

「うーん、そうねぇ、そう言われると、彼のほうをとるかなあ」
「ご馳走さま! なーんだ、やっぱりラブラブなんじゃん」
「まあ、それなりにはね」
「いいなあ。私も結婚してもいいと思える日、来るかなあ」
「鈴木君と?」
「それは分からないけど」
「わ、理緒酷い!」
「まだだって、好き~! とまでは……?」

 香澄には正直に話してしまう。

「どうだろうね? 好きになる度に恋愛って形が違うから、橘先生への想いと比べちゃダメよ。身体を触られても嫌悪感がないならそこそこ好きなんじゃないの?」
「まだキスまでしかしてないもん。それもちゃんとしたのは一度だけ」
「そうなの? 」
「まだ付き合って一週間ちょっとだよ?」

 どのくらいでそういうことをするのか分からないけれど、まだまだ早い気がする。

「大事にされてるじゃない」

 香澄は笑った。

「まあ、初めてのことだらけって少し不安かもしれないけど、少しずつ知っていけばいいよ。まだ嫌な時は拒否すればいいし。それでもやろうとする男なら振ったほうがいい」

 言い切る香澄にそうなんだ、と感心する。
 香澄とこういう話をするとは思わなかったな。
< 154 / 238 >

この作品をシェア

pagetop