MR(医薬情報担当者)だって恋します!

「他にはないの? 買いたいもの」
「スーツ。夏用のをセールで安く買えるかなと思って」
「じゃ、見に行こう」

 女性靴や服の売り場に行っても動じない鈴木は女慣れしてるからだろうなと思うと少し面白くなかった。
 靴は3センチヒールがなかなかないが、スーツはまたスーツで悩みがある。私は上と下のサイズが違うのだ。

「鈴木さ、暗い色のスーツしか着てこないから、こんなのは?」

 薄いベージュのスーツを鈴木が勧めてくる。確かに持ってない色。試着室に持って入った。
 悪くない、と思っていると、

「俺も見たい」

 と鈴木が言ってきた。仕方ないので試着室から出る。

「おー、明るい色も似合うじゃん」

 そう言われると悪い気はしない。私はそのスーツを購入した。鈴木が靴とスーツの入った紙袋を迷わず手に持つ。慣れていない私はそれだけで感動だ。

「じゃ、さ。今度は俺と会う時に着てほしい服を俺が買うから」
「え?」

 どうやら鈴木は私に可愛らしい服を着せたいようだ。

「わ、私、そういうの似合わないから。シンプルな服の方が好みだし」
「ワンピースぐらい着てくれてもよくない?」

 私は困ってしまう。ワンピースこそ入らないのが多いのに。

「胸に合わせると太って見えるからワンピは嫌なの」

 小声で言う。本当は香澄の結婚式用のワンピースを買いたいけれど、鈴木と選ぶのはまだちょっと勇気がいる。

「まあ、服は選ぶけど、個人的には残念じゃないよ。俺は小さいより大きいほうが……」

 自分で言って鈴木は赤くなっている。私は私で鈴木に今後胸を触られることがあるのだと思って恥ずかしくなり、顔を伏せた。

「その。じゃあ、ワンピじゃなくていいから可愛いの着てよ」
< 157 / 238 >

この作品をシェア

pagetop