MR(医薬情報担当者)だって恋します!

 結局、ベージュピンクのロングプリーツスカートとバーガンディのニットで妥協した。
 パスタを食べて、この後どうする? となった。

「その、何もしないなら部屋に来てもいいよ?」

 という私の言葉に、

「何もしないは無理。キスぐらいさせてよ」

 と鈴木が言う。

「……キスまでだからね?」

 私たちは地下鉄に乗って私のアパートに戻った。

「明るい部屋だね」

 南の窓から陽が差し込んでるのを眩しそうに見て鈴木が言う。

「お茶入れるね。ハーブティーでもいい?」
「ハーブティー? そんなの日常に飲んでんの?」
「私、香りがいいのが好きだから」
「そうだったな。香水も好きだもんな」

 鈴木は言って香水瓶の並んだ棚を見ている。
 私はレモングラスとペパーミント、リンデンの入ったハーブティーを出した。

「レモンみたいな香り」
「うん。レモングラスってのが入ってるから」

 私は鈴木の向かいに座ろうとすると、ベッドを背に座っていた鈴木が手招きした。

「せ、狭いし」
「大丈夫だよ。俺の隣に座ってよ」

 私は借りてきた猫のように鈴木の隣に座る。

「そんなに緊張しなくていいのに」

 鈴木は言って私の髪を撫でた。私はますます固まる。

「買い物まで仕事のもんなんだもん。ほんと鈴木は真面目だよな」

 耳の近くでくすくすと笑われて、私はどきりとする。鈴木には何でもないことが私には初めてで戸惑ってしまう。

「だから緊張し過ぎだって」

 鈴木は私の顔を覗き込む。 

「何? もしかしてキスされるって期待してる?」
「そ、そんなんじゃっ!」

 かあっと熱くなって言い返すと、額にキスされた。
 そして、その唇が段々と下りてくる。瞼に。鼻に。
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