MR(医薬情報担当者)だって恋します!

「最近はどうなの? 営業」

 鈴木君の言葉に、

「うーん。呼吸器内科の先生方に苦労してるよ」
 と私は答えた。

「癖が強い先生多いからね、あの科」
「でも、鈴木く、じゃなくて、鈴木、は可愛がってもらってるみたいじゃん」

 ちょっと嫉妬の混じった声になってしまった。

「まあ、一緒に野球観戦したり、ゴルフしたりはしてるからね。少しずつ仲良くはなってるよ」
「いいな~。外来持ってて喘息患者の多い、竹部先生と塩屋先生とが一番うまくいってなくって、ほんと困ってるんだ」
「あの二人ね。千薬さんって喘息薬も持ってたんだ? 大変だね」

 鈴木が苦笑いを浮かべて言う。

「でも、こないだ鈴木が呼吸器内科で説明会してたとき、教授から拍手もらってたよね? あれ、他のMRもびっくりしてたよ」

 鈴木から言われて私は驚いた。

「そうなの? でも、あれは高血圧の薬だったんだけどね」
「なかなか教授から拍手なんてもらえないって」
「私が女だし、若いからたぶんお情けで拍手してくれたんだよ」

 私と同い年ぐらいの娘さんがいるのかもしれない。

「また、女だからってそこで言うんだ? 俺はすごいことだと思うけどね」
「でもそのときも塩屋先生いなかったよ」
「説明会、わざと出ない先生いるよね」
「せっかく弁当も用意してるのにそれだけ持っていかれると悲しくなる」
「だね」

 病院が近づいてきて、私たちは会話をやめた。

「それじゃ、本当に駐車ありがと」
「うん。じゃ、午後もなんとか頑張ろうな」

 病院の前でそう言葉を交わすと、それぞれの目的の場所へと移動した。鈴木と営業の前に会話することで緊張がほぐれたのか、いつもよりドクターに自分から話しかけることができた。

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