MR(医薬情報担当者)だって恋します!

 いつものように上の階から医局を回って下りていく。

「おはようございます! エクサシール、よろしくお願いします!」

 出会うドクター皆に頭を下げて薬名をコールする。
 朝は午後よりもドクターたちは忙しく、足早に階段を下りていく。
 その邪魔にならないようにしながら、私も下りる。
 次は呼吸器内科のある4階だ。少し緊張する。
 と、橘先生が自室から出てきた。今日は外来の日だ。
 目が合う。

「おはようございます」
「おはよう」

 声が重なった。私はなんだかほっとした。いつもの橘先生だ。橘先生の配慮にじんとする。

「シルビルナな」
「はい、よろしくお願いします!」

 橘先生の笑顔に私も笑顔で返した。やっぱり素敵な人だ。
 医局にも顔を出す。塩屋先生がちょうど医局から出ようとしていた。

「おはようございます」
「おう」
「外来ですね。シルビルナもよろしくお願いします」

 多くは望んではいけない。まずは一例からでも。

「気がむいたらね~」

 塩屋先生らしい返事に苦笑い。
 医局に残っている竹部先生にも、

「おはようございます」

 と声をかけた。いつものように返事はないけれど、それでも負けちゃだめだ。
 次は循環器内科。階段で3階に下りる。

「おはようございます! エクサシール、よろしくお願いします!」

 外来に行くドクターの中に、沢野先生がいた。私の声に、にっこり笑って手を挙げてくれる。相変わらず沢野先生はやさしい。

 大丈夫。振られても、毎日は変わらない。ちょっと心は痛むけど、そのうちそれも癒えるはず。

 私は朝の営業を終えて支店へと戻った。
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