並んで歩くなら、あなたと

01.なんかへにゃっとした先輩

 高校生になって二日目。

 私は体育館でぼんやりと部活動紹介を聞いていた。

 従兄がいる園芸部に入ると入学前から決めていたから、他の部活は聞き流していた。

 やがて園芸部が呼ばれて、スラリと背の高い部長、須藤(すどう)藤也(とうや)がステージに立ち、説明を始めた途端、周りの生徒が「ひゅっ」と息を吸った。――女子だけだけど。


「ちょ、花菜(かな)、すっごいイケメン出てきた……!」


 隣に座っていた(もも)がステージを見て目を丸くしていた。


「そだね」

「反応悪い!」

「だって見慣れてるし。あれ、私の従兄だから。それに私のパパの方がかっこいいもん」

「マジ? 紹介して!! 花菜、ファザコン?」

「ちょっとね。紹介はヤダよ。藤也、彼女いるし。ベタ惚れだもん」

「同じ学校? かわいい?」

「大学生。逞しくてかわいい」

「ぐう、年上かわいい系彼女とか、納得しかない……」


 ステージでは藤也が穏やかな笑顔で園芸部の活動内容を説明していた。

 説明が終わった頃に目が合ったから、ひらひら手を振ったら、藤也も手を振り返してきて、私の周りの女子が黄色い声を上げて手を振っていた。




 教室に戻ると、桃が唸り声を上げながら隣に座った。



「彼女がいても、あの顔面は拝みに行きたい」

「何言ってんの」

「だってさあ、背が高くて、イケメンで部長! どうしようかな……園芸部、見に行こうかなあ」

「私行くよ」

「マジか。でも園芸興味ないしなあ。でも花菜について行ったら『花菜の友達です』って仲良くなれたりするかな」

「しないんじゃないかな……?」


 さっきも言ったけど、藤也は彼女を溺愛してるから。

 教室を見回すと、他にも藤也の噂をしている女子が何人かいた。

 とにかく藤也は顔がいいから、分からなくもない。

 中学まではもうちょい冷たい感じで、高嶺の花扱いされてたけど、高校一年で彼女が出来て雰囲気が柔らかくなってから爆モテしていた。


 でもどれだけモテても藤也は彼女だけを溺愛していて、目に入れても痛くないくらいにかわいがっていたのだ。

 そんな従兄と一緒に育った私は、藤也が男の子の基準になっちゃって、『彼氏』への期待値がやたら高くなった。

 高校に入ったら藤也みたいにかっこよくて頼りがいがあって、私だけを大事にしてくれる男の子がいるんじゃないかって思ってたのに、全然そんなことなかった。

 だからこれは嫌味とかじゃなくて、かっこいい先輩にキャアキャア盛り上がれる同級生が羨ましくて仕方なかった。

 ……まだ二日目だし、諦めるには早すぎるんだけどね。



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