並んで歩くなら、あなたと
 ひらひらと手を振る藤也に、同じように手を振り返して歩き出した。

 世菜先輩もついてきて、私を覗き込んだ。


「怒ってる?」

「怒ってないです。呆れてます」

「そっちのほうが嫌だ。ごめん」

「別にいいですけど、今後は止めてください」

「ううん、ごめん。嬉しくてつい、余計なことを言った」


 見上げた世菜先輩は、タヌキみたいな丸顔を悲しそうにくしゃっとさせていて、先輩の威厳なんかゼロだし、全然かっこよくないし、情けなくて仕方ないけど、まあ、かわいいから許そう。


「いいよ。行きましょう」

「うん」


 先輩から目を逸らしてそっけなく言ったつもりだったけど、返ってきた短い返事はやたらと嬉しそうで、調子が狂う。



 いつもどおり裏門まで行って、水やりをしてから外に出た。ずらりと並んだ桜並木はもうすっかり散ってしまって、代わりに青葉が出てきていた。

 そしてその中には、毛虫もそこそこ湧いていた。


「うーん、冬の剪定が足りてなかったんですかね」

「そうかも。あと、今年の冬の薬剤散布が人手不足で、樹の上の方まで撒けてないんだ」

「じゃあ、次の冬はしっかり撒かないとですね。ともかく、今湧いている分を駆除しましょう」


 私と先輩は軍手をしてトングを構えた。

 それぞれ、洗剤を薄めたバケツを足元に置いて、毛虫を放り込んでいく。


「由紀さん、手慣れてるねえ」

「そりゃそうですよ。ずっとパパの手伝いをしてますもの」

「……そのままお家を継ぐ予定?」

「そうできたらいいなって思いますけどね」

「そっかあ」


 世菜先輩はなぜかため息をついた。


「進路、悩んでるんですか?」

「うーん、ちょっと。ゴールデンウィーク明けに進路希望出さないといけないんだ」

「え、早っ」


 あと一年したら、私もそういうのを考えないといけないってこと?

 早いでしょ……。

 藤也はC大の園芸学部に推薦で行くって言ってた。そのために園芸部で部長をしているし、成績も学年で一、二位を維持してるのだと聞いていた。

 まあ、成績はお父さんの藤乃(ふじの)くんから、


「あれだけ反抗期に暴れといて、俺より成績悪いのウケる」


 って煽られて意地張ってるのもあるけど。

 うちの学校は進学校だから、基本的にみんな進学する。

 OBの藤乃くんもC大の園芸学部に進学したと聞いていた。

 うちのパパもOBだけど、家業を継ぐから進学はしなかったらしい。

 桔花(きっか)蓮乃(はすの)はどうするんだろう。

 まあ、須藤(すどう)さん家なら、仕事はいくらでもありそうだけど。


「……私はどうしよう」

「ねえ。俺もちゃんと考えないといけないけど……」

「悩みますよね……。あ、でも世菜先輩がどうしても働き口がなかったら、うちで雇ってあげます」

「そう? じゃあ、困ってたら助けて」

「私厳しいですよ」

「知ってる」


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