並んで歩くなら、あなたと
 バケツがいっぱいになってきたから、交換しに中庭へ戻った。

 中庭では、倉庫の前で藤也が部員の予定を集計していて、他の先輩や一年生が雑草を抜いたり、枯れた花をむしったりしていた。


「あ、花菜。ゴールデンウィークの最終日のことって、瑞希さんに聞いてる?」

「聞いてない。何?」

「ゴールデンウィーク明けに花壇の花の入れ替えをするから、連休の最終日に苗を持ってきてもらうように依頼してるんだ。時間を聞いておきたかったんだけど」

「ちょっと待ってね。パパに確認する。世菜先輩、先に戻っててもらっていいですか?」

「わかった」

「あ、待って。バケツは一個でいいから! 絶対に転ぶから!」


 私の分のバケツも持っていこうとする先輩を止めていたら、藤也が笑って、代わりに運びに行ってくれた。

 急いでスマホを出してパパに電話をかける。


『へいへい、学校に持ってく苗? ちょっと待て。えっと……昼一に持ってく予定になってる』

「わかった、ありがと。藤也……部長に伝えておきます」

『何それっぽい言い方に変えてんだよ。つーか藤也が直接俺に電話かけてくればいいだろ』

「藤也にそう言っておく。じゃあ、ありがとねー」

『おう。遅くならないうちに帰れよ。暗くなるようだったら迎えに行くから』

「大丈夫だって」


 電話を切ったら、ちょうど藤也が戻ってきたから、パパとの会話を伝えた。


「午後か……その日は家を休ませてもらおうかなあ」

「パパに早めてもらおうか?」

「んー、でもその時期、瑞希さんが忙しいのは分かってるから、無理は言いたくねえんだよな。うん、じゃあ桔花と蓮乃をその日、部活なしにして家のほうに行ってもらおう。花菜は悪いけど、もし大丈夫ならこの日は一日いてくれると助かる」

「わかった。パパとおじいちゃんと相談しておくね」


 相談と言っても柚希に押し付けるだけなんだけど。

 スマホをポケットに入れて、裏庭に走って戻ると、世菜先輩が黙々と作業していた。


「先輩、ごめんなさい、任せちゃって」

「ううん。苗の搬入の話だろ?」

「先輩はゴールデンウィーク最後の日、一日いる?」

「予定表に丸はつけた」

「私も最終日は一日いるから、先輩も運ぶのを手伝ってね」

「……うん。一緒にやるよ」


 先輩と並んで桜にくっついた毛虫を取っていく。

 今日一日じゃ終わらなそうだ。明日……明後日くらいまでかかるかな。


「世菜先輩」

「なあに、花菜ちゃん」

「冬の薬を撒くの、頑張りましょう」

「なに、いきなり」

「毛虫取りに三日はかかりそうだなって思ったら、うんざりしてきました」

「他のとこの手伝い行ってていいよ」

「ここまでやったんですから、最後まで一緒にやりますよ」


 つい言い返したら、世菜先輩が嬉しそうに目を細めていて、何か言わされた気がした。
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