並んで歩くなら、あなたと
「な、なにさ……」

「送ってくれたんだ?」

「そんなんじゃ……そうなのかなあ?」


 二年生の席を通り過ぎたなとは思ったけど……!

 ナンパされてから、ほぼ毎日、授業のあとには迎えに来るし、帰りも送ってくれる。彼氏か……?


「あの人、構ってほしがりだよね? クラスの友達とか彼女とか、いるっしょ」

「それ、先輩に言ったら泣くんじゃないかな」

「なんで?」

「花菜は彼氏いたことある?」

「ない。藤也のお父さんと私のパパよりかっこよくて頼りがいがあって、たくましい男に会えたことがない」


 そう言うと、桃が呆れた顔になった。


「あのさ、理想は理想でいいと思うけど、それで目の前にいる先輩を見ないのは、違うと思うんだよね」

「うん?」

「おこちゃまの花菜には難しいかなー。先輩、こんなに嬉しそうにしてるのに」


 桃は私の手元のスマホを覗き込んだ。

 ポカンとした私と満面の笑みの先輩。

 いつものふにゃっとした笑顔と似てるけど、それよりちょっと楽しそうだ。


「よくわかんないな」

「ま、先輩は好きで花菜にかまってるんだし、花菜が嫌じゃないなら、受け入れてあげればいいと思います」

「なるほど……?」

 校庭を見ると、そろそろ三年生男子の騎馬戦が始まる。スマホを見ると、桔花から


『私たちで写真撮るから、動画ヨロ』


 と連絡が来ていた。


「藤也の動画、撮らなきゃ」

「それもパパに送るの?」

「ううん、これは桔花と蓮乃に頼まれたの。親に送るんじゃないかな」

「わたくしめにも、恵んでくだせえ……!」

「自分で撮りなよ。たしか藤也は総大将でしょ」


 スマホを構えて、藤也を探した。

 藤也の乗った騎馬が出てくると、女子がキャアキャア言い出した。

 でも、藤也が笑顔で手を振ったのは桔花と蓮乃で、なんていうか、らしいと思う。


 スマホを構えたまま、ふとキョロキョロすると、二年生の席に座る世菜先輩と目が合った。

 藤也の真似をして手を振ると、先輩がふにゃっとした顔で手を振り返してくれた。

 すぐそばでシャッター音がした。

 耳元で桃がささやく。


「先輩に手を振ってる花菜は、私が知ってる中で一番かわいいと思う」


 桃のスマホに、先輩と同じようなふにゃっとした顔で写っている私が写っていて、言い返したいのに、藤也を撮っている途中だったから何も言い返せなかった。
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