並んで歩くなら、あなたと
「藤也、おつかれ」

「おう。かっこよく撮れた?」

「周りの歓声がすごくて、声聞こえるか微妙」

「マジかよ。メイサに俺の勇姿を見せたかったのに」


 これだよ。

 どれだけ歓声を上げられても、どれだけちやほやされても、藤也が欲しいのは彼女のメイサちゃんからの「かっこよかったよ」の一言だけだ。


「部活対抗リレー、サッカー部に勝つんでしょ」

「そらそうよ。今年こそ!勝つ!!」


 去年はそのメイサちゃんにボロ負けしたから、今年は勝ちたいらしくて、休みの日にメイサちゃんと走っていたけど、どうかな。

 ちなみに、私も一緒に走った。桔花と蓮乃は「興味ない」と須藤(すどう)のおじいちゃんの手伝いに出ていて、家にすらいなかった。

 園芸部が集まると、藤也が声を上げた。


「今年は、俺の雪辱戦にお付き合いください!」

「がんばろう!」

「しょうがない部長だなー」

「去年、彼女と彼女の元カレにボロ負けして、俺はめっちゃ悔しいです。この際、サッカーのボールを外に投げ捨ててでも勝ちます」
「かっこ悪い……」


 部活対抗リレーはそれぞれ部活にちなんだものを持って走る。

 園芸部は今年は小さめのアジサイの鉢、サッカー部は例年ボールを蹴って走るらしい。

 そのサッカー部の人たちが近くに集まって、私たちを指さした。


「今年もせいぜい頑張れよ」

「そんなちっさい女の子出すくらい人手不足なわけ?」

「陰キャの集まりだもんな」


 おお、先輩たちの顔がいきなり剣呑なものになった。

 でも、そうだね。


「先輩たち」

「ん?」


 私は先輩たちにニコッと笑いかけた。


「私は父から『舐められっぱなしで終わらすな』って常日頃言われているんです。ぶち殺してきます」

「花菜、俺も行く。誰かスコップ貸して、埋めてくるから」

「待て待て待て、今から走るから! 走りで負かしてきて!!」


 先輩たちに止められた。

 ええい、離して。このまま「ちっさい女の子」なんて舐められたままでいるわけにはいかない!!


「いいから並べって。由紀さん先頭だから、ぶちかましてきて!」

「鉢で殴っていいですか?」

「ダメ! 須藤もアンカーなんだから、最後に並べ!」


 副部長に叱られて、仕方なく鉢を持ってスタート地点に並んだ。

 隣に立つサッカー部の先輩が、ニヤッと笑って私を見ていた。


「転ばないようにがんばってね、かわいいお嬢さん」

「そちらこそ、その不細工ヅラがそれ以上歪まないといいですね」

「あ? てめぇ、今なんつった?」


 次に走る先輩が、私の腕を引いた。

 でも何か言う前に、体育委員が部活対抗リレーを始めるとアナウンスする。


「位置について……よーい、どん!」


 勢いよく駆け出す。校庭をぐるっと半周して、先輩に鉢をパスした。

 っし、今のところ一位だ。

 私を煽った人は、近くで座って息を切らしていた。

 どうしよう。走り終わったし、手を出していいのかな。


「由紀さん」

「あ、先輩。どうしたんですか?」


 砂をかけてやろうと片足を引いたところで、世菜先輩が寄ってきた。


「お疲れさま。かっこよかったよ」

「そうでしょ。藤也よりかっこよかったでしょ?」

「うん。一番かっこよかった。今のところ園芸部が一番だね」


 先輩がタオルを貸してくれたから、ありがたく汗を拭いた。

 すると、サッカー部の人が舌打ちしてきた。


「ちっ、ウザ。女のくせに足速いとか、かわいくねえし、イチャイチャしやがって」

「世菜先輩。タオルありがとう。あいつの顔潰してくるね、物理的に」

「待って、待って!」

「やだ! 舐められたままで終わらせたらパパに怒られる!」

「あんな負け惜しみ、放っておけばいいから」


 先輩に止められて、ムカつくけど仕方ない……。夜道では気をつけろよ。


「負け惜しみじゃねえし! んだよ、坂木。自分が鈍くせえからってそんな女に尻尾振ってさ」

「は? 先輩になんてことを!」

「ちょっと、花菜ちゃん、俺はいいから」

「よくない!」

「こら、由紀」


 先輩に羽交い締めにされて暴れていると、教頭先生がやってきた。

 いつの間にか部活対抗リレーは終わっていたみたいで、藤也も呆れた顔で走ってきた。


「何騒いでるんだ」

「こいつが先輩のこと馬鹿にするから!」

「女のくせに先輩に向かって舐めた口叩くからだろうが」

「お前みたいな顔も根性も不細工なやつの何が先輩なんだ! たかが一年早く生まれただけで偉そうに!」

「由紀、止めなさい。それに君も。次の競技の準備をするから、詳しい話は後で聞かせて」

「その前にこいつの口に砂詰めさせてください、すぐ済ませますから」

「ダメです。席に戻りなさい」


 教頭先生に促されて、席に向かおうとした。

 でも、世菜先輩が次の棒倒しに出るからと入場門に向かうので、ついていった。


「先輩、あいつの頭、棒で潰してきて」

「同じチームなんだよ」

「事故に見せかけて」

「花菜ちゃん、あんなやつのことじゃなくて、俺のこと応援してくれない?」

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