並んで歩くなら、あなたと
 いつも通り裏門の水やりと、ついでに草むしりを終えてスマホを見ると、また世菜先輩から山ほど写真が送られてきていた。

 朝一の飛行機に乗って、昼頃にはこっちに着くらしい。

 時計を見ると昼前だから、そろそろ帰ってくるのだろうか。

 そんなことを思いながら、ホースとじょうろ、ゴミ袋を片付けていたら、藤也(とうや)が顔を出した。


「花菜、裏門の花壇は大丈夫そう?」

「問題なし。世菜先輩に写真送って見てもらってたし」

「世菜も問題なし?」

「さあ、それは知らないけど」

「花菜が世菜を泣かせたって聞いたけど」

「泣かしたけどさあ」


 翠先輩と黄乃先輩が伝えたんだろう。

 余計なことを……って思うけど、修学旅行中に泣かせた私が悪いから言い返せなかった。


「えっと、たぶん大丈夫。仲直りした……と思う」

「ならいいんだ。あいつは俺やお前と違って繊細だから、優しくしてやれよ」

「……気をつける」


 藤也はニコッと笑って私の髪をぐしゃぐしゃに撫でた。手つきがパパにそっくりだ。


「さ、そろそろおしまいにしよう。他のところも終わるだろうから、俺は先に――」


 言いかけた藤也が黙った。

 視線を追ったら、大荷物を抱えた世菜先輩がぽかんとした顔で立っていた。


「先輩! 何してるんですか!?」

「あ、えっと……」

「おかえり、世菜。おい花菜、ホースとじょうろは俺がついでに持って行くから、ゴミ捨ては自分でやれ」

「うん、ありがと」


 ゴミ袋の口を縛って、まだぼんやりしている先輩に駆け寄った。


「おかえりなさい、世菜先輩。沖縄、楽しかった?」

「……花菜ちゃんがいなくて寂しかった」


 先輩はしょんぼりした顔でうつむいてしまった。

 しょうがない人だな。


「先輩、ゴミ捨ててカバン取ってくるからちょっと待っててください」


 頷いたのを確認してから、走り出した。

 中庭で藤也に完了の報告をして、放り出してあったカバンを持ち、裏門に戻った。

 世菜先輩は花壇の様子を見ていたけど、前髪で隠れていてどんな顔なのかよく見えなかった。


「先輩、帰りましょう」

「……うん。ねえ俺がいない間、部長と花壇の世話してた?」

「ううん。藤也はたまに様子を見に来てただけです。人気のないところで私が一人なのは心配ってさ」

「そっか。ごめん、任せちゃって」

「大丈夫だよ。藤也は私のパパに頼まれてたから」


 先輩を下から覗き込む。

 なんでか、また悲しそうな顔をしていた。


「お昼、食べました?」

「まだ」

「じゃあ、一緒に駅前のメック行こう。お土産ください。あと、お土産話も聞かせて」


 手を伸ばして、先輩の前髪をよけた。

 明るい茶色の瞳に私を写す。


「……うん。ごめん、気を遣わせた」

「だいじょぶ、写真も見せて」

「見せる。花菜ちゃん」

「なあに?」

「ただいま」

「おかえり、世菜先輩」


 先輩はやっと、ちょっと笑った。
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