並んで歩くなら、あなたと
 ホースを片付けてから、先輩と並んで間引くチューリップを選んだ。

 二人で裏門の両端から進めていって、萎れた花と茎を取り終えた頃には、空がオレンジから濃い青に変わりつつあった。

 ずっとかがんで作業をしていたから、春だというのに私も先輩も汗だくだ。


「世菜先輩、終わりましたか?」

「うん、これで最後。由紀さんは?」

「終わりました。暗くなってきたし、片付けて今日は終わりにしましょう。あ、片付けは私がしますから、先輩は追加で水をあげておいてもらえますか?」

「わかった」


 先輩は目を細めてから、じょうろで水をまいていく。

 水やりと片付けが同時に終わったので、二人で中庭に向かった。


「世菜先輩、明日は何するんですか?」

「明日は裏門を出たところの草むしりをしようかな。ところで、俺の名前は坂木世菜だよ」

「えっ、世菜って苗字じゃなかったんですか? 失礼しました。えっと、坂木先輩?」


 先輩は「んー」と小さく唸った。


「やっぱり世菜って呼んで」

「なんで? すみません、なんでですか?」

「ふふ、別にいいよ、敬語じゃなくても。由紀さんに呼ばれるなら、名前のほうがよかったからさ」


 春の風が吹いて、先輩のふわふわした髪が揺れた。

 夕陽が眩しくて、先輩の表情がよく見えない。


「答えになってないですけど」

「俺も花菜ちゃんって呼ぶね」

「坂木先輩、思ったよりチャラいんですね」

「すみません、ごめんなさい、引かないで」

「冗談です。好きに呼んでください」

「うん、ありがと。明日はジャージ着てきて。草むしりすると制服汚れるから」

「わかりました、世菜先輩」


 中庭に戻り、倉庫で片付けをした。

 世菜先輩と一緒に藤也に作業内容を報告して、今日の部活はおしまい。


「花菜、今日の部活は楽しかった?」

「まあまあ」

「スカートに土ついてるぞ」

「ほんとだ。先輩、教えてくださ……って、先輩のスラックス泥だらけじゃないですか!!」


 さっき私に、制服汚れるからジャージで来いって言わなかったっけ!?

 先に自分の制服気にしなよ!!

 世菜先輩のスラックスを叩いて泥を落とす私を、藤也が笑いながら見ていた。
< 8 / 49 >

この作品をシェア

pagetop