並んで歩くなら、あなたと
放課後、私は世菜先輩と裏門の水やりに行った。
「世菜先輩、ホースも私が持ちますよ」
「だめ、俺が持つよ。後輩の女の子に荷物を持たせるなんてかっこ悪いでしょ」
「すっ転ばれるほうがかっこ悪いです。先輩、そこ、ぬかるんでる!」
「転ばないって……っ、わっ」
世菜先輩は、笑っちゃうくらい見事に、ぬかるんだ地面に足を突っ込んだ。
予想していたから、さっと腕を伸ばして先輩の背中を支えた。
「かっこ悪いです」
「ご、ごめん……」
ばつの悪い顔をする世菜先輩を起こしたけど、やっぱりホースは持たせてもらえなかった。
まあ、私はすでに大きいじょうろとスコップと剪定鋏とゴミ袋も持っているから、ホースまで渡すと先輩が手ぶらになっちゃうんだけど。
「そのホースと、このじょうろを交換しましょう。空のじょうろなら、転んで落としても危なくないですし」
「心配してくれてる?」
「ホースを絡められたり壊されたりしたくないんです」
「学校の備品だよ」
「だとしても」
つい先輩をじろっと睨んでしまった。
「農具を雑に扱いたくないんです。私たち農家にとって、手足も同然なんです」
「由紀さんはかっこいいねえ……ごめん、からかってるとかじゃなくて」
睨んだままでいたら、先輩は気まずそうに目を逸らした。
本当に鈍くさいし、ぼんやりしてるし、なんなんだろう、この人。
「……とにかく、足元に気をつけてください。次に転んだらお姫様抱っこしますよ」
「ふふ、気をつけます」
私はわりと本気で言ったのに、相変わらず世菜先輩は楽しそうだ。
裏門に着いたら、まずは水やりだ。
蛇口の場所を教わって、ホースを取り付けた。
「世菜先輩、ホースはこっちに置きます」
「遠くない?」
「今のままだと導線を横切るから、絡まって先輩が転びます」
「由紀さんはしっかりしてるねえ」
水やりは世菜先輩にお願いした。裏門担当っぽいし、たぶん順番とかやり方とかもあるだろうし。
私は持ってきたスコップやゴミ袋を、邪魔にならない位置に、使う順番に並べておく。じょうろに水を入れて、チューリップの近くに置いた。
先輩が水をやっている間に、チューリップの様子を確認する。
「んー、時期が終わりなのと、水が足りていないのかな」
呟くと、先輩がホースを持ったままやってきた。
「朝晩撒いてるよ」
「たぶん、球根が密になりすぎなんです。根が絡まっているかも。ちょっと掘り返してみましょうか」
私は答えを待たずに軍手をはめ、スコップを手にした。
手前のチューリップの根本を、根っこを傷つけないように気をつけながら掘っていく。
「ああ、やっぱり。えっと、次からは一列目と二列目が交互になるように植えるといいかもです」
「……さすが」
「先輩?」
先輩は少しぼんやりしていたけど、声をかけるとすぐに頷いて微笑んだ。
「あ、ごめん。じゃあ、次は一緒に植えようか」
「はい。そうしましょう。これ、どうしたいですか?」
「え?」
「水をやる量を増やして様子を見るか、萎れてきているものは間引くか、です。間引くといっても花と茎を取り除いて球根を休ませるので、水をやる量は増やしたほうがいいと思いますけど」
「……それ、俺が決めていいの?」
世菜先輩は、不思議そうな、でも少し戸惑ったような顔で言った。
「この花壇、先輩の担当なんですよね? なら、決めるのは先輩です」
「由紀さんは、かっこいいねえ」
「よく言われます」
「じゃあ、間引こうかな。一緒にやってくれる?」
「はい。でも先輩、先にホースを片付けましょう」
「俺が引っかかって転ぶから?」
「それもありますし、散らかしておきたくないんです」
「……わかった。片付けよう」
「世菜先輩、ホースも私が持ちますよ」
「だめ、俺が持つよ。後輩の女の子に荷物を持たせるなんてかっこ悪いでしょ」
「すっ転ばれるほうがかっこ悪いです。先輩、そこ、ぬかるんでる!」
「転ばないって……っ、わっ」
世菜先輩は、笑っちゃうくらい見事に、ぬかるんだ地面に足を突っ込んだ。
予想していたから、さっと腕を伸ばして先輩の背中を支えた。
「かっこ悪いです」
「ご、ごめん……」
ばつの悪い顔をする世菜先輩を起こしたけど、やっぱりホースは持たせてもらえなかった。
まあ、私はすでに大きいじょうろとスコップと剪定鋏とゴミ袋も持っているから、ホースまで渡すと先輩が手ぶらになっちゃうんだけど。
「そのホースと、このじょうろを交換しましょう。空のじょうろなら、転んで落としても危なくないですし」
「心配してくれてる?」
「ホースを絡められたり壊されたりしたくないんです」
「学校の備品だよ」
「だとしても」
つい先輩をじろっと睨んでしまった。
「農具を雑に扱いたくないんです。私たち農家にとって、手足も同然なんです」
「由紀さんはかっこいいねえ……ごめん、からかってるとかじゃなくて」
睨んだままでいたら、先輩は気まずそうに目を逸らした。
本当に鈍くさいし、ぼんやりしてるし、なんなんだろう、この人。
「……とにかく、足元に気をつけてください。次に転んだらお姫様抱っこしますよ」
「ふふ、気をつけます」
私はわりと本気で言ったのに、相変わらず世菜先輩は楽しそうだ。
裏門に着いたら、まずは水やりだ。
蛇口の場所を教わって、ホースを取り付けた。
「世菜先輩、ホースはこっちに置きます」
「遠くない?」
「今のままだと導線を横切るから、絡まって先輩が転びます」
「由紀さんはしっかりしてるねえ」
水やりは世菜先輩にお願いした。裏門担当っぽいし、たぶん順番とかやり方とかもあるだろうし。
私は持ってきたスコップやゴミ袋を、邪魔にならない位置に、使う順番に並べておく。じょうろに水を入れて、チューリップの近くに置いた。
先輩が水をやっている間に、チューリップの様子を確認する。
「んー、時期が終わりなのと、水が足りていないのかな」
呟くと、先輩がホースを持ったままやってきた。
「朝晩撒いてるよ」
「たぶん、球根が密になりすぎなんです。根が絡まっているかも。ちょっと掘り返してみましょうか」
私は答えを待たずに軍手をはめ、スコップを手にした。
手前のチューリップの根本を、根っこを傷つけないように気をつけながら掘っていく。
「ああ、やっぱり。えっと、次からは一列目と二列目が交互になるように植えるといいかもです」
「……さすが」
「先輩?」
先輩は少しぼんやりしていたけど、声をかけるとすぐに頷いて微笑んだ。
「あ、ごめん。じゃあ、次は一緒に植えようか」
「はい。そうしましょう。これ、どうしたいですか?」
「え?」
「水をやる量を増やして様子を見るか、萎れてきているものは間引くか、です。間引くといっても花と茎を取り除いて球根を休ませるので、水をやる量は増やしたほうがいいと思いますけど」
「……それ、俺が決めていいの?」
世菜先輩は、不思議そうな、でも少し戸惑ったような顔で言った。
「この花壇、先輩の担当なんですよね? なら、決めるのは先輩です」
「由紀さんは、かっこいいねえ」
「よく言われます」
「じゃあ、間引こうかな。一緒にやってくれる?」
「はい。でも先輩、先にホースを片付けましょう」
「俺が引っかかって転ぶから?」
「それもありますし、散らかしておきたくないんです」
「……わかった。片付けよう」