並んで歩くなら、あなたと
「世菜!」


 打ち上げのあと、二次会をカラオケでやるというので、入り口までクラスの連中と一緒に行ったら、ちょうど花菜ちゃんのクラスが出てくるところだった。


「花菜ちゃん、会いたかった」

「二時間前に会ったじゃん」

「五分離れたら寂しいんだよ、俺は」

「はいはい。桃ー、また明日ねー」


 花菜ちゃんは苦笑して、友達に手を振っていた。

 俺も花菜ちゃんも今日は歩いて来ていたから、手をつないで一緒に駅に向かう。


「ねえ世菜、どっか行く?」


 見上げた花菜ちゃんに、さっき言われたことを思い出した。


『続き、できた?』


 体育祭の後、あいつが来てなければ、俺はきっとこの子にキスをしていただろう。……もし、そうなっていたら、花菜ちゃんはどんな反応をするだろうか。


「世菜?」


 俺が何も言わないので、花菜ちゃんは立ち止まって、不思議そうな顔をした。

 キスしたいな。

 抱きしめてキスして、俺だけのものにできたらいいのに。


「花菜ちゃん」

「なあに?」

「……ちょっと歩こうか」


 また手をつないでゆっくり歩く。

 いつの間にか学校に戻っていて、校門が閉まっていたから敷地の周りに沿って歩いていく。


「あ、ここねえ、蓮乃がハボタン植えたがってた」

「こっちにパンジー並べるって黄乃(きの)先輩が楽しみにしてたよ」

「校庭の方はねえ、」


 花菜ちゃんが楽しそうに花の話をするのを聞きながら半周して、裏門までやってきた。

 門の脇の花壇で花菜ちゃんが立ち止まる。


「ここにフクジュソウ植えたいんだ」

「うん、植えよう」

「幸せを招くんだって。昔、パパが言ってた」

「もう十分幸せだよ……花菜ちゃんがいるから」


 そう言うと花菜ちゃんは照れたような顔で俺を見た。

 三年前は由紀(ゆき)さんの後を追って畑を走っていた女の子が、今は俺の隣で微笑んでいる。

 俺がそれをどれだけ幸せに思っているか、伝わればいいのに。


「花菜ちゃん、好きだよ」

「ありがと。私も世菜のこと好きだよ」


 我慢できなくて、顔を近づけた。

 触れる直前に焦ったように目を閉じたのが見えて、顔が緩んでしまった。

 外だし学校の前だったからすぐに離れたけど、本音を言えばもっとしていたかった。


「ごめんね、急に。我慢できなかった」

「……いいけどさ」

「もう一回していい?」

「あの、いいけど、ここではちょっと」


 その顔がかわいくて我慢できなくて、でも怒られそうだから額に唇を寄せた。


「花菜ちゃん、俺としたいことある?」

「え? んー、そうだなあ……」


 手をつなぎ直して歩き出した。

 まだ陽は高いし、どこへだっていけそうだ。


「世菜とならなんだっていいけど、せっかくだし植物園に行きたいな」

「行こう」

「今から?」

「行けるよ、たぶん」

 君とならどこへだって行ける。

 君も同じようにそう思ってくれたら、嬉しい。
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