鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した
 夕方。紫くんに頼まれて資料のレビューをしていると、長谷川が戻ってきた。


「長谷川さん、お疲れさまです。立花先輩借りてます」

「おつかれ。俺のじゃねえけど、丁重に扱えよ」

「そのつもりです。世話になってますので。先輩、親切だからつい頼っちゃうんですよね」

「あ、自覚あった? もうちょい自分でやって? 長谷川はおかえり。明日の資料、用意したからあと三十分くらいしたら声かける」

「ただいま、わかった」


 長谷川が立ち去ってから、紫くんの資料のレビューに戻る。

 誤字脱字はだいぶ減ったし、それ以外のミスもなくなってきたから、あとは見やすさを気にしてほしい。


 そういうところを指摘して切り上げようとしたら、紫くんがくすくす笑った。


「長谷川さん、意外とわかりやすいですよね」

「何が?」

「いや、立花先輩が気づいてないならいいです。レビューありがとうございました」


 紫くんは、そのまま去って行った。

 何言ってるんだ……。

 とにかく、資料を印刷して長谷川のところに持って行った。


「お待たせ。今いい?」

「おう。紫は大丈夫そう?」

「大丈夫。誤字脱字チェック機能って偉大だね」

「そっちかよ」


 資料を渡して目を通してもらい、気になるところだけ確認しておしまい。


「これだけならメールでもよかったね」

「いや、紙で見た方がわかりやすいし、次からも紙で頼む」

「わかった。明日、何時くらいに行く?」

「午前中って言われてるから、朝礼終わったら出て、昼飯食って帰ってこよう。立花、好き嫌いないだろ? お客様先の近くにうまい飯屋あってさ」


 長谷川がスマホで地図を開いたから、横から見せてもらう。

 おお、和食だ。いいね。そろそろウナギとか食べたい季節なんだよね。肝吸いがついてる店だと嬉しい。


 長谷川おすすめの店も、魚料理がメインの店だった。

 ウナギはなさそうだけど、ホッケや鮭の西京焼きがおいしそうだ。


「魚メインかあ、いいけどお酒飲みたくなっちゃう」

「立花が飲みたくならない飯って逆にあんの?」

「……ドーナツとか?」

「それ、飯じゃねえよ」


 そうやって笑った長谷川は、今までになく柔らかい表情をしていて、なんかいいものを見られた気がした。
< 28 / 64 >

この作品をシェア

pagetop