鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した
 五分ほどして、長谷川が戻ってきた。……やたら大きいカバンを抱えて。


「大荷物だ」

「なんにもねえからな」

「申し訳ない」

「いや、いい。俺が勝手に世話焼いてるだけだし」


 長谷川はテーブルに茶碗とお椀、皿を並べていく。

 男性の一人暮らしで、食器を一セット以上持ってるのがまずすごい。

 ……もしかして元カノと揃えたとか? いや、前は実家だって言ってたっけ。


「なんでこんなにお皿持ってるの?」

「実家出るときに、姉がパン祭りでもらった皿を勝手に送りつけてきたから」

「ウケる」

「まさかマジで使うハメになるとは思ってなかったけど」

「申し訳ない」


 ごはんと、大きい水筒に入れて持ってきた味噌汁、それから青菜のお浸し。さらに、さっきもらったのと同じ里芋の煮っ転がしとホイコーローまで並べられて、狭いテーブルが一気に埋まった。


「あの、これは?」


 抱えたままだった容器を指すと、


「それは冷蔵庫にしまって、夜でも明日でも食べろ」


 そう言われて、おとなしく冷蔵庫にしまった。


「そこに座れ」

「……はい」


 ここ、私の部屋だけど、とは言わずに黙って座った。


「え、えっと、いただきます」

「どうぞ、召し上がれ」


 長谷川に割り箸を差し出され、そのまま受け取った。

 お味噌汁には油揚げとワカメと大根が入っていた。出汁がじんわり染みて、おいしい!


「お、おいしい……!」

「だろー? たんと食え」

「ふふ、お母さんみたい」

「嬉しそうにすんな馬鹿」

「里芋もおいしいねえ、甘辛くて、ほくほくで。ごはんもいい匂いがする。やっぱり炊飯器で炊くと違うよねえ」

「突っ込まねえぞもう……」


 長谷川は呆れた顔で箸を進めた。

 ホイコーローも、ピリ辛なのにお味噌がほんのり甘くておいしい。野菜はしんなりしすぎず、ちゃんとシャキシャキ感も残っているし、お肉を噛むたびに油がじゅわっと広がって、箸が止まらない。


「長谷川が作ってくれるもの、なんでもおいしい。やっぱり月七万出すから、三食作ってほしい。足りなければ言い値で払うよ」

「俺は主婦かよ。俺の方が稼いでるっつうの」

「それはそう」


 営業と営業事務は給与体系がちょっと違うから、同期でも長谷川の方が基本給が高いはずだ。そうじゃなくても長谷川は営業成績がいいから、業績報酬もかなり入ってると思われる。


「今日はデザートないの? プリンとか」

「ときどき馬鹿みたいに図々しくなるの何なんだよ」

「おいしかったからもっと食べたい」

「そりゃどうも。でもデザートはない。そもそも、弁当箱返しに来ただけだったんだけどな」

「かたじけない。でもおいしかった。ごちそうさまでした」

「そらよかった。お粗末様でした」


 長谷川はちょっと笑って箸を置いた。
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