鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した
 翌日、丹沢先輩と昼ごはんのラーメンを食べながら喋っていた。


「先輩、自炊します?」

「しない。休みの日にラーメン茹でるとか、刺身買ってきて、ごはん炊いて一緒に食べるくらい」

「私より自炊レベル高いです」

「俺、自分の自炊レベル三くらいだと思ってたんだけどな。最大値百で」

「私は昨日やっと炊飯器を買いました」


 先輩の目が、呆れたようにきゅっと細くなった。

 ラーメンはもうほとんど残っていない。レンゲでスープをすくいながら、全部飲むかどうか迷う。

 昨日、長谷川に「俺らもう三十なわけじゃん」って言われたし、ここは自重しておくか。


「立花、入社して割とすぐから一人暮らししてたよな」

「はい。入社して最初の夏休みに引っ越したので。先輩、手伝ってくれましたもんね」

「うん。百パーセント下心で手伝ったけど、マジで何もなかったな」

「下心あったんですか? 全然気づかなかったです。もっと早く言ってくださいよ」

「いやさ、普通気づくだろ?」

「すみません、仕事中って仕事しか見てないので、個人的な感情スイッチ切れてるっていうか」


 だから、モラハラで他人の感情を引っ張り出してくる長谷川が苦手だった。でも最近は、そこまでしんどくなくなってきて本当に助かる。


 丹沢先輩はちょっと変だけど穏やかで親切だから、心置きなく感情スイッチをオフにして仕事モードで接していた。……そのせいで先輩の好意にも気づけず、ちょっと悪いことをしてしまった。


「俺、立花のそういうところ嫌いじゃないけどね」

「私も先輩のこと嫌いじゃないです。葉山さん、うまくデートに誘えました?」

「なんで知ってんだよ。先週、一緒に飯食ってきたよ」


 今さら先輩と湿っぽい話をしたくないから、適当に話を逸らした。

 丹沢先輩が経理部の葉山さんをデートに誘おうと頑張っている話は、経理部の同期から聞いていた。


「まあ、立花が自炊してるかどうかは別にいいんだけど」

「はい」

「できて損はないぞ。こういう業界にいるわけだし」

「……そうですね」

「米、洗剤で洗うなよ」

「そ、そんな昭和のコントみたいなことしませんよ!」

「どうだかなあ」


 あはあはと笑って、先輩は立ち上がった。私も箸を置き、コップの水を飲み干す。

 午後も忙しいから、頑張って先輩についていこう。
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