鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した
 ……オカンだし。きっと向こうも、子供に料理を教えてるくらいの感覚なんだろう。

 つい、そわっとしちゃったけど、長谷川から目を逸らしてまな板の上の卵焼きへ視線を向けた。


「あ、卵焼きどうかな」

「もういいんじゃねえかな。こっちも食う?」

「うん。だし巻き卵ってあんまり食べたことないから、気になる」

「ちょっと待ってろ」


 長谷川はお弁当箱を二つ出してきた。

 いつの間にか炊けていたごはんをお弁当箱いっぱいに敷き、その上で卵焼きの左右の端を包丁で切り落とす。さらに半分に切ってごはんの上に載せる。残った白いスペースへ鶏そぼろを半分ずつ盛り、隅に洗ったプチトマトを詰めたら、それだけでずいぶんお弁当らしくなった。


「これは粗熱が取れたら冷蔵庫に入れておく。んで、はい、あーん」


 長谷川が切り落とした卵焼きの端っこを菜箸で摘まんで私に向けた。

 それはどうなの? とはなったけど、オカンだし、私が味見したいって言ったんだし、ということにして口を開けた。


「い、いただきます……わ、おいしい」

「だよな。これはこれでごはんが進む感じで俺は好き。ちょっと砂糖を足して甘くしてもいいし、出汁じゃなくて市販の麺汁入れると、もっとごはんに合う味になるから、いろいろ試してみろよ」

「本当だねえ。わー、これごはんほしい」

「卵もごはんもまだあるから、晩飯はだし巻き卵定食にでもするか。ちょっと待っとけ」

「えっ、でも」

「もちろん手伝えよ」

「……うん」


 長谷川は私の何倍も手際よく、あっという間にだし巻きを作った。それに作り置きだというもやしのゴマ和えと小松菜のナムルを添え、とろろ昆布と梅干しと海苔を入れたお吸い物まで作ってくれる。私がしたことと言えば、お湯を沸かしてごはんをよそったくらいだった。


「いただきます」

「どうぞ、めしあがれ」


 わかってはいたけど、やっぱりすごーく美味しい。

 私がさっき作った卵焼きより美味しい気がする。


「長谷川と作って食べると何でも美味しいねえ」

「だろー?」

「毎日作ってほしい」

「プロポーズかよ、しかも俺に作らせる気だし」

「て、手伝うよ!」


 長谷川はくつくつ笑いながら、箸を進めていた。


 なんだかなあ。ただの同期でしかないのに、一緒にごはんを作って、向かい合って食べて、笑いながら喋っている。意味分かんないな。


 ……一番意味分かんないのは、私がそれを全然嫌がっていないことなんだけど。
 
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