鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した
――というわけで、私は今、野菜売り場の前で長谷川と並んでいる。
「ピクニックならデザートとビールが必要じゃないかな」
「デザートは現地でアイスとか買った方がいいだろ」
「確かに!」
「ビールは知らねえ。俺は飲まねえし」
「残念。じゃあ今回は無しで」
今回の行き先は電車で何駅か行ったところにある日帰りグランピングだ。
小高い丘の上にあるグランピング場で、もちろん泊まることもできるし、自分でテントを張れるスペースもある。
でも明日は日帰り。月曜日は仕事あるし。日帰りじゃなかったら持てるだけのお酒を持ち込んでいた。
グランピング場の周りは元々ゴルフ場だったらしく、広い芝地やちょっとした小川、アスレチック、遊歩道なんかが整備されている。
なんでこんなに詳しいのかというと、仕事で行ったことがあるからだ。施設が出来たときに食料の仕入れ先の選定や契約に携わったのだ。
「なんか弁当に入れたいものある?」
「卵焼きとプチトマト。戸部先輩のお弁当に入ってて、おいしそうだった。あとふりかけごはん」
「いいねえ。んー、ふりかけじゃなくて鶏そぼろにするか。それっぽく見えるし」
「鶏そぼろ! 難しそう!」
「そうでもねえよ。鶏はもも肉にするか」
長谷川がカートを押し、私はその後ろをのんびりついていく。……先週に引き続き、オカンの買い物についてきた子供の感じが強いけど、作るのは私だし! 教わりながらだけど! やっぱりオカンと子供だわ。
プチトマトとカットレタス、卵に鶏もも肉のひき肉を買い込み、そのまま長谷川の部屋へ向かった。
置きっぱなしになっていたエプロンを身につけて、いざ調理開始だ!
「ごはんは先に炊いておいたから、まず卵を焼こう。鶏そぼろが甘辛味だから、だし巻きにするか」
「難しくない?」
「全然。砂糖の代わりに液体出汁入れるだけだから。それに、うちの卵焼きって基本だし巻きだから、俺的にはこっちの方が普通」
「そうなんだ。うちは甘々だったなあ。おいしいけど、全然ごはん進まなくてさ」
「慣れたらそれも作って食わせてくれ」
長谷川はボウルと卵を並べる。
卵を受け取って、ボウルの縁に軽く当てて割ろうとして――盛大に散らかった。
「卵が爆発した」
「下手くそかよ。割れ目に親指を添えて左右に開け。待て、先にボウルから殻を取り除いて……」
殻を取り除いてから再挑戦。今度はうまく割れた。卵を四つ割って溶き、出汁と水を加えてよく混ぜる。
卵焼き用の四角いフライパンが温まったら卵液を少し流し入れ、端から丸めてみる。……くっちゃくちゃになった。
「火、弱めろ。最初は芯になるから多少ぐちゃぐちゃでもいいから。そうそう、やってりゃそのうちどうとでもなる。もし、どうしてもまとまらなかったら、炒り卵にして、鶏そぼろと一緒にごはんに乗せればいいから」
「あ、できそう。やった、くるってなった!」
「大きくなってきたし、無理に菜箸じゃなくてもいいよ。フライ返し使え」
「ありがとう!」
すごい。ちゃんと卵焼きの形になってる!
人生初の卵焼きだけど、おいしそうにできた!
焼き上がった卵焼きは、まな板の上に敷いたキッチンペーパーへそっと乗せる。そのまま包んで形を整え、冷ましている間に今度は鶏そぼろに取りかかる。
「挽肉をフライパンにあけて、砂糖と醤油と酒入れて混ぜろ。先に混ぜた方が柔らかく仕上がるし、まんべんなく味がつく。あと、焦らなくていいだろ」
「へー。たしかに、卵焼きめっちゃ焦った」
「まあ、卵料理はそういうもんだから、慣れなんだけどな」
言われたとおりにフライパンへ挽肉と調味料を入れ、全体が混ざったところで火をつけた。じわじわと端から泡が立ち始め、甘辛い匂いがふわっと広がる。
「火を弱めろ、焦げる」
「あわわ」
「手え止めんな、くっつくぞ」
「ちょ、待って」
「ウケる、そんなに焦んなくても平気だって」
「だ、だってさあ。あ、ぽろぽろになってきた」
菜箸でかき混ぜ続けていたら、さっきまで塊だった挽肉が少しずつぽろぽろとほぐれてきた。
「ん、いい感じ。火を止めて、味見してみ?」
差し出されたスプーンで鶏そぼろをすくう。湯気と一緒に甘辛い香りが立ち上った。
「熱い~でもおいしい~」
「俺にもくれ」
長谷川は私がくわえていたスプーンを受け取ると、菜箸で鶏そぼろを乗せて食べた。
「うん、うまい。俺が教えただけあるわ」
「……そ、そうだね」
「どうした?」
「や、なんでもない……」
「ピクニックならデザートとビールが必要じゃないかな」
「デザートは現地でアイスとか買った方がいいだろ」
「確かに!」
「ビールは知らねえ。俺は飲まねえし」
「残念。じゃあ今回は無しで」
今回の行き先は電車で何駅か行ったところにある日帰りグランピングだ。
小高い丘の上にあるグランピング場で、もちろん泊まることもできるし、自分でテントを張れるスペースもある。
でも明日は日帰り。月曜日は仕事あるし。日帰りじゃなかったら持てるだけのお酒を持ち込んでいた。
グランピング場の周りは元々ゴルフ場だったらしく、広い芝地やちょっとした小川、アスレチック、遊歩道なんかが整備されている。
なんでこんなに詳しいのかというと、仕事で行ったことがあるからだ。施設が出来たときに食料の仕入れ先の選定や契約に携わったのだ。
「なんか弁当に入れたいものある?」
「卵焼きとプチトマト。戸部先輩のお弁当に入ってて、おいしそうだった。あとふりかけごはん」
「いいねえ。んー、ふりかけじゃなくて鶏そぼろにするか。それっぽく見えるし」
「鶏そぼろ! 難しそう!」
「そうでもねえよ。鶏はもも肉にするか」
長谷川がカートを押し、私はその後ろをのんびりついていく。……先週に引き続き、オカンの買い物についてきた子供の感じが強いけど、作るのは私だし! 教わりながらだけど! やっぱりオカンと子供だわ。
プチトマトとカットレタス、卵に鶏もも肉のひき肉を買い込み、そのまま長谷川の部屋へ向かった。
置きっぱなしになっていたエプロンを身につけて、いざ調理開始だ!
「ごはんは先に炊いておいたから、まず卵を焼こう。鶏そぼろが甘辛味だから、だし巻きにするか」
「難しくない?」
「全然。砂糖の代わりに液体出汁入れるだけだから。それに、うちの卵焼きって基本だし巻きだから、俺的にはこっちの方が普通」
「そうなんだ。うちは甘々だったなあ。おいしいけど、全然ごはん進まなくてさ」
「慣れたらそれも作って食わせてくれ」
長谷川はボウルと卵を並べる。
卵を受け取って、ボウルの縁に軽く当てて割ろうとして――盛大に散らかった。
「卵が爆発した」
「下手くそかよ。割れ目に親指を添えて左右に開け。待て、先にボウルから殻を取り除いて……」
殻を取り除いてから再挑戦。今度はうまく割れた。卵を四つ割って溶き、出汁と水を加えてよく混ぜる。
卵焼き用の四角いフライパンが温まったら卵液を少し流し入れ、端から丸めてみる。……くっちゃくちゃになった。
「火、弱めろ。最初は芯になるから多少ぐちゃぐちゃでもいいから。そうそう、やってりゃそのうちどうとでもなる。もし、どうしてもまとまらなかったら、炒り卵にして、鶏そぼろと一緒にごはんに乗せればいいから」
「あ、できそう。やった、くるってなった!」
「大きくなってきたし、無理に菜箸じゃなくてもいいよ。フライ返し使え」
「ありがとう!」
すごい。ちゃんと卵焼きの形になってる!
人生初の卵焼きだけど、おいしそうにできた!
焼き上がった卵焼きは、まな板の上に敷いたキッチンペーパーへそっと乗せる。そのまま包んで形を整え、冷ましている間に今度は鶏そぼろに取りかかる。
「挽肉をフライパンにあけて、砂糖と醤油と酒入れて混ぜろ。先に混ぜた方が柔らかく仕上がるし、まんべんなく味がつく。あと、焦らなくていいだろ」
「へー。たしかに、卵焼きめっちゃ焦った」
「まあ、卵料理はそういうもんだから、慣れなんだけどな」
言われたとおりにフライパンへ挽肉と調味料を入れ、全体が混ざったところで火をつけた。じわじわと端から泡が立ち始め、甘辛い匂いがふわっと広がる。
「火を弱めろ、焦げる」
「あわわ」
「手え止めんな、くっつくぞ」
「ちょ、待って」
「ウケる、そんなに焦んなくても平気だって」
「だ、だってさあ。あ、ぽろぽろになってきた」
菜箸でかき混ぜ続けていたら、さっきまで塊だった挽肉が少しずつぽろぽろとほぐれてきた。
「ん、いい感じ。火を止めて、味見してみ?」
差し出されたスプーンで鶏そぼろをすくう。湯気と一緒に甘辛い香りが立ち上った。
「熱い~でもおいしい~」
「俺にもくれ」
長谷川は私がくわえていたスプーンを受け取ると、菜箸で鶏そぼろを乗せて食べた。
「うん、うまい。俺が教えただけあるわ」
「……そ、そうだね」
「どうした?」
「や、なんでもない……」