鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した
「どしたの?」

「あのさ……一分で良いので、抱きしめさせていただいてもいいでしょうか」

「いいけど、なんで敬語?」

「美颯がどういう反応するかわかんなくて緊張してる」

「ウケる。いいよ」


 腕を広げたら、思った以上の勢いで抱きしめられた。

 すごい。力が強くて、全然抜け出せない。


 そっと手を伸ばして紫月の背中に手を添えた。温かくて広い背中だ。

 私の方が、一分なんかじゃ全然足りなくて、思わずしがみついてしまう。


「……ごめん、一分で止められなかった」


 そう紫月が言って、体が離れたのはどれくらい時間が経ってからだろう。


「ううん。大丈夫。私も離れられなかった。なんかすごいねえ。お腹のあたりが温かくなった。またしてね」

「するよ。いくらでもする。でも今日はこれで終わりにさせて。帰せなくなるから」

「……うん」


 部屋の前まで送ってもらって、今日はそれ以上何も言わずに分かれた。

 帰れなくなるのは私も同じだったから。


「はー……ヤバいな」


 急いで台所に向かって片付けを始めた。

 そうしないと、なんにも手がつかなくなりそうだった。
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