鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した
 次に目が覚めたらすっかり夜で、枕元のスマホが震えていた。

 紫月からメッセージが届いていて、


『仕事終わった。なんか必要なものある?』


 ということだ。


「えっと、なにがいいかな」


 とはいえ寝起きだし、熱で頭もぼんやりしていてなんにも思いつかない。

 素直に「寝てた。熱が上がっててなんにも思いつかない」と送ってから、シャワーを浴びる。

 さっぱりしたら少し頭も動くようになったから、炊いておいたおかゆを食べた。

 空になったお茶碗の写真を撮って、紫月に


「おかゆ食べた。おいしかった」


 と送ったら、すぐに返事が来た。


『そらよかった。こっちは買い物終わって、もうすぐ着く。ドアに飲み物下げとく』

「マジか」


 顔を見たいけど、今日は我慢。せめて熱が下がらないとダメだ。


 おかゆを片付けていたら、玄関の方からかさかさと袋の擦れる音がした。

 今すぐ駆け寄りたいのを我慢して電話をかける。


『あ、気づいた?』

「うん。ありがとう。紫月は頼りになる彼氏だねえ」

『そう言ってもらえると嬉しいけど、ただ早く美颯(みはや)に会いたいだけだよ。……ていうか、美颯に彼氏って言われるの初めてじゃねえか?』

「そう言われればそうかも。誰かに紹介とかもしないし」


 誰かって誰だろう。

 会社でわざわざ言うことでもないし、友達も忙しくてなかなか会えないし。


『……紹介してくれていいけど』


 紫月が低い声で言った。


「誰に?」

『そっちのご家族とかに』


 私の家族に?


「じゃあ、年末一緒に帰る? 前にそんな話しなかったっけ」

『えっ、本当にいいんだ?』


 自分で言っておいてなんで驚くのさ。

 さっきまでの低い声とは打って変わって、慌てたような声がスマホ越しに聞こえてきた。


「いいよ? でもそっちも実家に顔を出すんじゃないの?」

『出すけど近いから、本当に顔出すだけだよ。年末年始は実家は忙しいし、長居したら手伝わされる』

「あー」

『だから、美颯を紹介するなら年末年始以外だな。悪い、まさか誘ってくれるとは思ってなくてテンション上がっちまった。まだ熱あるんだろう? 早めに寝ろよ』

「……うん。ありがとう。おやすみ」


 通話を終えて、玄関の外にぶら下がっていた袋を取ってきた。

 中にはスポーツ飲料とゼリー、それからプリンが入っていた。


 ゼリーの蓋を開けながら、ふと紫月があんなに嬉しそうにした理由を考えた。

 家族に紹介ってことは、たぶん恋人ってだけじゃなくて、その先も考えてのことのはずだ。……紫月は私との将来も視野に入れているんだろうか。


 ……年末、かあ。


 私にはまだ、先のことなんてわからない。

 わかんないけど……わかんないまま放っておいちゃダメな気がする。


「まずは風邪を治そう」


 熱で茹だった頭じゃ、きっとろくな答えが出てこない。

 冷たいゼリーが美味しかった。

***

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