鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した
数日後。風邪を治した私は、紫月と一緒に二度目のグランピングの用意をしていた。
「ご迷惑をおかけしました!!」
「なんも迷惑かけられてねえよ。仕事もちゃんと引き継ぎしてくれたし、そりゃ心配はしたけど、彼氏としてそれくらいさせてほしいし」
「ありがと。嬉しかったよ」
そんな話をしながら、二人でスーパーの売り場を回っていた。
グランピング場には一通りの設備があるから、温めれば食べられるものを中心にいくつか買っていく予定だ。
「いつか自分で鍋を持っていきたいし、飯ごうで飯も炊きたいけど、それは徐々にだよなあ」
「そうだねえ。私はなんでもいいから……」
「美颯のなんでもいいは、マジで『なんでも美味しくいただきます』だもんな。何作ってももりもり食べてくれるから、作りがいがあるわ」
紫月は笑いながら、カゴにレトルトカレーを入れた。キャンプと言えばカレー!ということらしい。ごはんはグランピング場に用意されているものを買う予定だ。
「でも俺もなんか作りたい。というわけで、いくつか調べてきた」
私はカートを押しながら、紫月が楽しそうにキャンプ飯の話をするのを聞いていた。
一通り買い終えたら部屋に戻って、紫月は下ごしらえをするらしい。私の方は自分の部屋に戻って荷造りだけど、一泊分だからすぐに終わる。普段から一泊くらいの短期出張はよくあるしね。
荷造りを終えて紫月の部屋に顔を出したら、そっちもちょうど料理の下ごしらえを終えたところだった。
「よしよし、荷造りも終わったし、あとは飯食って早めに寝るだけだな。あー、あと、その、一個確認したいんだけど」
「なあに?」
「あのさ、同じテント内で寝泊まりするじゃん。グランピングだから、ベッドが用意されてるけど。それで……セミダブルが二台らしくて」
紫月は台所に立ったまま、視線をうろうろとさせながら一気に言った。
それから少し黙り込んで、ゆっくりと口を開く。
「嫌だったら、そう言ってくれていいんだ。でも、俺としては一緒に寝たいんだけど、美颯はどうでしょうか……?」
真剣な眼差しで、紫月は私を見つめていた。
付き合い始めてひと月ほど。手をつないだり、抱きしめ合ったりはあったけど、それ以上に距離が近くなることはなかった。
思わず体の前で指をこねくり回してしまう。
手が汗ばんで、指先がじっとりしてきた。
喉がカラカラになって、言葉がなかなか出てこない。
「……一緒が、いいです」
つられて敬語になってしまった。顔が熱くて、紫月の足元ばかり見てしまう。
「ほんとに?」
「ほ、本当に。あの、至らない点も多いかとは思いますが」
すぐには返事がない。
小さく息を吐く音が聞こえた。
「それは俺もだから……えっと、ありがと」
恐る恐る顔を上げたら、紫月は眉間にシワを寄せ、口をぎゅっとへの字にしていた。
なんだか、昔のキツかったときの長谷川みたいな顔に見えた。でも、そうじゃないって私はもう知っている。
何も言えないまま、互いの顔を見つめ合った。……緊張しているのはお互い様だ。紫月の眉なんて、すっごい下がってるし。
「あのねえ、私、紫月のこと好きだよ」
「俺も、美颯のこと好きだ」
「嬉しい。明日、楽しみにしてるね。夜ごはん食べようよ」
「……そうだな。あのさ、俺、美颯に優しくできてる?」
何を言ってるんだろう。そんなの今さらなのに。
でも返事をする前に、紫月は照れたように笑って口を開いた。
「美颯は何食いたい?」
「困ったな、紫月が作るものはなんでも美味しいから選べない」
お互いに情けない顔で笑い合って、並んで台所に立った。
半年前はあんなに怒ってばかりだった紫月が、今は私の名前を少しだけ不安そうな声で呼んでいる。
「ご迷惑をおかけしました!!」
「なんも迷惑かけられてねえよ。仕事もちゃんと引き継ぎしてくれたし、そりゃ心配はしたけど、彼氏としてそれくらいさせてほしいし」
「ありがと。嬉しかったよ」
そんな話をしながら、二人でスーパーの売り場を回っていた。
グランピング場には一通りの設備があるから、温めれば食べられるものを中心にいくつか買っていく予定だ。
「いつか自分で鍋を持っていきたいし、飯ごうで飯も炊きたいけど、それは徐々にだよなあ」
「そうだねえ。私はなんでもいいから……」
「美颯のなんでもいいは、マジで『なんでも美味しくいただきます』だもんな。何作ってももりもり食べてくれるから、作りがいがあるわ」
紫月は笑いながら、カゴにレトルトカレーを入れた。キャンプと言えばカレー!ということらしい。ごはんはグランピング場に用意されているものを買う予定だ。
「でも俺もなんか作りたい。というわけで、いくつか調べてきた」
私はカートを押しながら、紫月が楽しそうにキャンプ飯の話をするのを聞いていた。
一通り買い終えたら部屋に戻って、紫月は下ごしらえをするらしい。私の方は自分の部屋に戻って荷造りだけど、一泊分だからすぐに終わる。普段から一泊くらいの短期出張はよくあるしね。
荷造りを終えて紫月の部屋に顔を出したら、そっちもちょうど料理の下ごしらえを終えたところだった。
「よしよし、荷造りも終わったし、あとは飯食って早めに寝るだけだな。あー、あと、その、一個確認したいんだけど」
「なあに?」
「あのさ、同じテント内で寝泊まりするじゃん。グランピングだから、ベッドが用意されてるけど。それで……セミダブルが二台らしくて」
紫月は台所に立ったまま、視線をうろうろとさせながら一気に言った。
それから少し黙り込んで、ゆっくりと口を開く。
「嫌だったら、そう言ってくれていいんだ。でも、俺としては一緒に寝たいんだけど、美颯はどうでしょうか……?」
真剣な眼差しで、紫月は私を見つめていた。
付き合い始めてひと月ほど。手をつないだり、抱きしめ合ったりはあったけど、それ以上に距離が近くなることはなかった。
思わず体の前で指をこねくり回してしまう。
手が汗ばんで、指先がじっとりしてきた。
喉がカラカラになって、言葉がなかなか出てこない。
「……一緒が、いいです」
つられて敬語になってしまった。顔が熱くて、紫月の足元ばかり見てしまう。
「ほんとに?」
「ほ、本当に。あの、至らない点も多いかとは思いますが」
すぐには返事がない。
小さく息を吐く音が聞こえた。
「それは俺もだから……えっと、ありがと」
恐る恐る顔を上げたら、紫月は眉間にシワを寄せ、口をぎゅっとへの字にしていた。
なんだか、昔のキツかったときの長谷川みたいな顔に見えた。でも、そうじゃないって私はもう知っている。
何も言えないまま、互いの顔を見つめ合った。……緊張しているのはお互い様だ。紫月の眉なんて、すっごい下がってるし。
「あのねえ、私、紫月のこと好きだよ」
「俺も、美颯のこと好きだ」
「嬉しい。明日、楽しみにしてるね。夜ごはん食べようよ」
「……そうだな。あのさ、俺、美颯に優しくできてる?」
何を言ってるんだろう。そんなの今さらなのに。
でも返事をする前に、紫月は照れたように笑って口を開いた。
「美颯は何食いたい?」
「困ったな、紫月が作るものはなんでも美味しいから選べない」
お互いに情けない顔で笑い合って、並んで台所に立った。
半年前はあんなに怒ってばかりだった紫月が、今は私の名前を少しだけ不安そうな声で呼んでいる。


