偽りのお見合いだとバレたのに、溺愛されています

「ありがとうございます!」

私が俯いていた顔をおそるおそる上げると、そこには安心したようにもみえる満面な笑顔の榊さんがいた。

「すごくアドバイス為になりました。
このまま今進めているブランドは進めるとして、
新しく低価格のブランドを作るのもアリだなと思いました」

ー前みたいに私の意見なんていらないと言われると思ったのに…

意見を受け入れてもらって、
自分自身も肯定してもらえた気持ちになった。

そこから、
仕事や他愛もない話をして、
あっという間に終わりの時間になった。

「あっという間でしたね…
もし良かったら、またお会いしませんか?」

ー私ももっと話したい。
でも私は身代わりでお見合いしただけだから…

「…また連絡しますね」

肯定も否定もせず、
その場は別れることにした。



「今日は本当にありがとうございました。」

「いえ、大したことしてないです。」

橘さんに頭を下げられ、慌てて否定した。

「いや、楓さんのおかげです。
榊さんとには、こちらから断りの連絡をいれておきます。」

ーやっぱり断るんだ。
元々の予定だから仕方ないけど、
すごく良い人なのに…

「では、こちらで失礼します。
本当にありがとうございました。」

橘さんはもう一度頭を下げて、
去っていった。

ーまさかコンビニの彼だったとは。
おそらくいつもとメイクも服装も変わっていたし、気付かなかったのだろう。

もしかしたら覚えられていないだけの可能性もあるけども…

覚えられていなかった悲しさと、
笑顔だけではなく、
性格も理想的だったことを思い出して嬉しくなった。

ーもう話すことはないだろうけど…

家に着き、
すぐ明日の早朝バイトのために早く寝る支度をした。
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