偽りのお見合いだとバレたのに、溺愛されています

「化粧品を購入するとき、
何を基準に買いますか?」

「そうですね…
私は乾燥肌なので、それに合ったものを一番に探しますね」

「なるほど。価格帯はどうですか?」

「私の場合、肌に関係あるものは多少高くても購入しますね。
例えばコスメなら下地とかにはお金かけますが、眉毛とかに使うものは安いもの使っています。」


「なるほど。ありがとうございます。
やはり全て高いもの、安いものというより、部分に分けて使い分けすることが多いですよね…」

「そうですね。
人によってどこにお金かけるのかは違うとは思いますが…」

「ありがとうございます。
参考になります。」

榊さんはそう言いながらも、
まだ少し暗い表情にみえた。

「あの、もし良かったら聞きますよ。
もちろん無理にとは言いませんが、
話した方がスッキリすることもあるので…」

私がそう言うと、榊さんは目を見開いて驚いた表情にみえた。

ー余計なお世話だったかな?

「ありがとうございます。
なかなか誰にも相談できなくて。
良ければ聞いてください。」

榊さんは会社で起きている部下との意見の違いについて話し始めた。

どうやら、
新しいブランドを作るに当たって、
榊さん含む上層部は高級感のある、
すこし価格帯が高いものを作ろうとしていて、進めていた。

しかし、
部下たちはこの物価高で、
高級感のあるものは売れないだろうと反対し始めていて、
どちらで進めようか悩んでいるとのことだった。

「部下たちの意見もわかるんです。
ただ、このブランドはパッケージにもこだわっていて、そこを質素にして少しでも価格を抑えるのは違うと思っているんですよね…」

「なるほど。
高級感がある商品は高くても、
若い人にとって憧れの商品になる可能性もありますよね。
そうしたら、需要はあると思います。
部下の方たちの意見もわかります。

しかし、価格を下げることがブランドコンセプトと合わないなら、他のブランドで価格帯を下げてターゲットを幅広くするとかですかね…」

私は求められていないのにアドバイスをしてしまった。

前職がマーケティングについて仕事をしていたこともあり、
そのときの癖で話してしまっていた。

ハッと気づいたときには、
もう遅く、榊さんは驚いた顔をしていた。

ーまずい、失敗した。

私はコンビニバイトとして働き始めたばかりのとき、
店の商品の配置について求められていないのにアドバイスしたときのことを思い出した。

「秋元さん。
あなたはバイトなんだから、ただこちらが指示したことに従ってくれればいいんだよ」

ーそうだ。
私は今はただのコンビニ定員。
さっきみたいに依頼されたならまだしも、求められていないのにアドバイスしても困らせるだけだ。

そう自己嫌悪に陥っていた。
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