偽りのお見合いだとバレたのに、溺愛されています
お見合い当日
数日後、
すぐ百合子にお願いされたお見合いの日になった。
元々夜には短期バイトをいれない限りは空いていたので、
都合も悪くなかった。
私は橘さんとの待ち合わせ場所に向かうと、既に橘さんが待っていた。
「お待たせしました」
私が小走りで駆け寄ると、
「楓様、今日は百合子様のふりをしてもらうんです。私に気を遣う必要はありません」と注意された。
橘さんからは、
自分のことは呼びつけにして敬語を使わないことをお願いされた。
ーそうか。
お見合いは成功させなくてもいいけど、百合子ではないことがバレたら大変だもんね…
私は心を引き締め直した。
「わかりました。宜しくお願いします」
橘さんと2人でお見合いのレストランに向かった。
ビルの上層階のレストランの個室に案内され、慣れない場所にドキドキしながらも、なんとか顔に出さないように気を付けながら歩いた。
定員さんからは、
もう榊さんは席についていることを知らされ、緊張でどうにかなりそうだった。
ー大丈夫。橘さんもいるし。
きっと橘さんを見れば、あちらも緊張して私のことは気にならないだろう。
そう願いながら個室に入った。
「失礼します。
お待たせしてしまい、すみたせん。」
私がお辞儀をして、
榊さんの方をみると、
ーそこにはいつもコンビニに来る憧れの人が座っていた。
榊さんは立ち上がり、
「初めまして」といつもの笑顔を見せてくれた。
ー気付いてない…
私いつもとメイクも服装も違うもんね…
いや、そもそも私のことなんて覚えてなかったのかも。
偽物とバレてなくて喜ぶべきなのに、
勝手にショックを受けてしまう。
私の顔を見た榊さんが、
「どうかしましたか?」と心配そうに見上げてきたので、
「いえ、初めまして」と笑顔を作り直して握手をした。
ーまさか榊さんが、
コンビニの人だったなんて…
オーラがあると思っていたけど、
まさか○○会社の社長だとは思っていなかった。
そして、ただの店員とはいえ、
顔を覚えられていないことに、
すごく悲しくなった。
「何か嫌いなものとかありますか?」
榊さんにそう話し掛けられて、
我に返った。
ー今は私の感情なんてどうでもいい。
百合子じゃないとバレずにお見合いを終わらすことが一番大事だ。
私はそう思い直して、
「嫌いなものありません」と笑顔で返答した。