地元なじみ。
ボーリングが進みながらも、やっぱり意識は背中に集中していた。
さっき以降、早川くんとは話していないけれど、背中越しに聞き耳を立てて分かった情報がある。

早川くんと同じレーンの女の子が、恐らく早川くんを好きっていうこと。
ずっと話しかけ、隣の席をキープしているようで。
美玲ちゃんの今の気持ちは分からないけれど、もしまだ好きなら早川くんを好きな女子が2人いる状況だ。

もう好きなのやめるんだし、関係ない……って言い聞かせても、心のモヤモヤが止まらない。


「あ……」

雑踏の中でふと、店内のBGMが耳に届く。
私と早川くんが好きなあのバンドの曲だ。

パスタ屋さんのこと、クリスマスのこと……忘れられない思い出がまた、こみ上げてくる。


「あ~この曲!ひなたくんの好きなバンドの曲だよね?」
「あーうん」
「え~そうなの?何ていうバンド~?」

美玲ちゃんが早川くんに話を振り、もう一人の女の子が興味を示しているのが聞こえてくる。
すごく有名なバンドではないから、塾でも私たちしか知らない話題だったけれど。
もう美玲ちゃんも知っていて、もう一人の子も聞くのかもしれない。
ファンが増えて嬉しいのに、また勝手にモヤモヤしている自分が嫌だ。

「ていうか、カラオケでひなたくんが歌ってくれたバンドだよ!クリスマスの時のさ」
「あ~あの時の!クリスマスのね」

そっか、カラオケの時に一緒にいた子なんだ。
さっき一瞬見ただけのかすかな記憶だけど、言われてみれば遊園地の時にもいたかもしれない。

「ふ、藤沢も好きだったよな、確か」

平塚くんが早川くんたちに聞こえるか聞こえなかの声で話しかけてきた。
私の気をそらそうと気を遣ってくれたのかな、相変わらず周りをよく見ている。


「新曲聞いた?」

突然、後ろから耳元に聞こえてくる早川くんの声。
さっきまでの背中越しに聞こえてきた声とは明らかに違う、声の近さ。
ふと平塚くんを見ると、意味ありげなウインクをしていて。

……違ったら恥ずかしいけれど、思い切って後ろを振り返る。
< 144 / 182 >

この作品をシェア

pagetop