地元なじみ。

バレンタイン当日――

「あかり、いい?自然にね、自然に!」
「ふふっ、はいはい」
「あくまで塾仲間として、3人平等に渡すから!三島くんに変に思われるようなこと言わないでね!」
「言わないよ」

塾へ向かう道のりで作戦会議。
とは言っても、梓ちゃんは気持ちを伝えるわけじゃなく、ただ友達として3人に渡す、という形にしたいらしい。
むしろ今は気持ちはバレたくないらしい。

だからチョコも手作りではなく、3人に全く同じものを買って用意している。

そしてそれは私も同じだ。昨日お母さんと駅前のショッピングモールで買い物した時に買ってもらった。
お母さんには、誰にあげるの〜?なんて聞かれて恥ずかしかったけれど。

「授業終わって帰る時に渡そうね!最初だと塾にいる間、なんか変な感じになっちゃいそうだし。あ、でも緊張して授業に集中できなそう……」

塾に着くまでの間、梓ちゃんはずっとブツブツ言いながら上の空で、緊張していた。
可愛いな、恋をするとこんな風になるなんて。
私もいつかわかる時が来るのかな……


「せんせーさよーなら!」
「はい、さようなら」

塾が終わって、みんな帰り始めている。
早川くんと平塚くんと三島くんも、いつも通り3人で帰ろうと塾の入り口のドアの方へ向かっている。
梓ちゃんとアイコンタクトを取り、私たちもそっとついて行くようにドアの方へ向かう。

塾を出たところで、梓ちゃんが思い切って、前にいた3人に声をかけた。
「どうしたの?」と平塚くんが返事をしてくれ、早川くんと三島くんもこちらを振り向いて立ち止まる。

冷たい風が頬に吹きつける中、しばしの沈黙。
チラッと横目で梓ちゃんを見ると、思いっきり緊張して固まってしまっている。

余計なことをせずに、私は梓ちゃんの後に続いて渡そうと思っていたけれど……
ちょっと助けた方が良さそうな気がするので、思い切って声を出す。

「これ、よかったら」

右手を早川くんの方へ、左手を平塚くんの方へ伸ばし、両手を出す。
私のその手にはチョコの箱。

このままだと手の本数の限界上、私が三島くんにだけあげない意地悪な感じになるので、梓ちゃん早く……と思っていると、

「わっ私も……こ、これ……」

梓ちゃんも三島くんにあげていた。
よかった……ひとまず一安心。

「いいの?ありがとう、藤沢」

平塚くんが微笑みながら受け取ってくれる。
そうだ、梓ちゃんのことばかりを気にしていたけれど、私は私で目の前の2人に渡していたんだった。

「……ありがとう」

いつも通りの余裕な感じで受け取った平塚くんに対して、少しよそよそしく目を逸らしながら受け取る早川くん。
そんな風に冷静に分析する余裕があるのは、私が3人に渡すことを特に意識したりしていないからだろう。

三島くんにも渡し、そのまま3人と別れて梓ちゃんと帰路に就いた。
お礼を言いながら抱きついて来た梓ちゃんは、やっぱり可愛かった。

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