御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
00 プロローグ
「んっ……ぁ、(れん)、さん……」

 互いの呼吸が咥内で行き来する。
 彼の熱い吐息を感じながら、私はぎゅうっと彼の背中にしがみついた。

 甘さよりも獰猛さのほうが勝つキスに、頭がくらくらする。
 とっくの昔に、理性の糸はぷつりと切れていた。

「蓮さん、これ以上は……っ」
「ごめん、千尋(ちひろ)……いまさらやめられない」

 逃さないと言わんばかりに鋭い目で見つめられて、心臓がどくりと音を立てる。
 彼は汗ばんだ手のひらで私の頬を撫でると、張り付いた髪を指ではらった。
 たったそれだけのことなのに嬉しくてしかたがなくて、無意識に彼の手にすり寄ってしまう。

 彼は可愛いと一言つぶやくと、ぢゅうっ、と下唇を吸い上げた。
 徐々にまた深いキスへと変わっていく予感に身体の芯が痺れる。
 
 ――これからすることは契約違反だ。最後までシたら、きっと後悔する。

 私は彼の、お飾り妻なのだから。
 こんなことをしたって、彼の想い人にはなれないのに。

 そう頭ではわかっていても、彼から与えられる熱を拒みきれない。

 私は彼から送られるキスを受け入れると、シーツの海に身を投げ出した。
< 1 / 139 >

この作品をシェア

pagetop