御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
 彼に腕を絡め取られて、ぴったりと体がくっつく。
 俺の腕を離さないように。なんて言われたけれど、こうして異性と腕を組んで歩くのは初めてで、歩き方がわからなくなった。

「あっ、……ぅ」
「どうした? 歩けない?」
「いや、その、慣れなくて……」
「歩けないなら、抱っこしていこうか?」

 彼がさっきみたいに私のことをからかって言う。
 本気でやりそうな雰囲気に、私はぶんぶんと首を振った。

「大丈夫です、自分で歩けます……!」

 彼から腕を離し、早歩きでタクシー乗り場へ向かう。
 ゆったりとした足取りでついてくる彼の余裕に、少しだけ悔しくなった。

「帰ったら頬を冷やそう。あと傷の手当ても」

 さらりと頬を撫でられて、痛みとは別の熱さが襲ってくる。

 彼は来たときと同じように私をタクシーに乗せると、安心させるためなのか、家に着くまでずっと手を握ってくれた。
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