【番外編】あなたが白制服に着替えたら、それが愛のはじまり


鹿児島からのフェリーに間に合い、中継の島までやって来た。

二人はその島の港で連絡船を待っていた。
この島には観光客がそれなりにいるのに夏帆が目指す島への客はいなかった。

(小林さんが言っていた通り、メジャーな観光地ではないのね)

その時、連絡船の船長らしき中年男性がやって来た。
中背で肌は浅黒く目がぐりっと大きくて可愛いカエルをイメージさせた。
口にはくわえ煙草が煙を上げていた。

「あっちの島には店がない。欲しいものがあればそこの商店で揃えておいで」

そう夏帆たちに教えてくれた。

「ちょこっとしたもの買ってくるよ」
柊慈が道を挟んだ斜向かいにある店に向かった。

夏帆は船長と二人きりとなった。

船長は係留ロープを引っかけているビットに腰を下ろし煙草をさらに深く吸った。

「あんた、なんでうちに島にくるんだ?」

顔も目線も合わさず、突然、船長は夏帆に問う。
いきなりの質問に夏帆もびっくりしたが答える。

「綺麗な島だなって惹かれて…」

「あんた、霊感は強いのか?」
「いいえ。ないですけど…」
「あの島には霊場でもある洞窟がある。霊感のある人がうかつに近づくと、頭が痛くなったり泣きだしたり大変なんだよ」

船長は不満そうに、ぼそぼそと口先だけで話した。

「…そうなんですか」

夏帆はイタコに会った時、一度だけ不思議な体験をしたが霊感などない。
今回もただ、あの島に呼ばれている気がしてならなかっただけだ。

「与那嶺おばぁに会いにきたのか?」
「誰ですか?」
「俺のおばぁだよ。ちょっと不思議な力を持っていてね。一時期口コミで広がって島にくる人が増えてえらい迷惑だった」

「いえ…知りませんでした」

「会いたいか?」

ここでようやく船長が夏帆の顔を見てきた。
カエルのように平べったい印象の顔。しかしその眼には見覚えがある。

(イタコさんと同じ眼だ)

「会えるのなら…」

興味はないはずの夏帆はなぜかそう返事をしてしまった。

「じゃあ、聞いといてやる。最近は身体の調子が良くないから無理かもしれないけどな。
あと一つ」

そういって船長はぎょろりとした眼で再び夏帆を見た。

「な、なんでしょう」
夏帆はちょっぴり緊張して身構えた。

「あんた、妊娠してるだろう」

「ええっ⁈」

「まだ出来たばっかだな。そりゃ、わからねぇか。とにかく霊場の洞窟には絶対に近づくなよ」

そう言って出航の準備のために立ち上がり船に乗り込んでしまった。

「お待たせ。夏帆。どうかした?」

あっけにとられる夏帆に柊慈は訊ねた。

(妊娠って、ついさっき検査したばかりなのに。
 そんなわけはないよね?)

船長の言葉は気になるが、柊慈に伝えればきっと混乱するだろう。
だから夏帆は柊慈に伝えるのは控えることにした。

「ううん。そろそろ出航だって」

笑顔で返すだけにした。




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