【番外編】あなたが白制服に着替えたら、それが愛のはじまり
旅行から帰ってきて、日常が始まった。
毎朝のルーティンのキスで夏帆は柊慈を見送った。
青森では仕事をしていた夏帆だが今日からは専業主婦となる。
自由時間が増えたといえばそうなのだが、この生活はすべて柊慈のために使いたいと夏帆は思っている。
疲れた柊慈が安心して帰れる、そしてほっとできる場所を提供することが自分の役割。
夏帆はそう理解していた。
「とりあえず、ゴミ掃除当番をしてきますか」
官舎のゴミステーションの掃除は交代制だ。今週は夏帆の番であった。
ほうきとチリ取りを手に持ちステーションに向かうと、その近くには幼稚園バスを待つ園児とママたちがいた。
(ちょうど登園の時間だ。懐かしいなー)
元気に走り回る園児をみて、夏帆は思わず微笑んでしまった。
そんな夏帆を見かけたあるママが声をかけてきた。
「もしかして成瀬さんですか?」
「は、はい」
夏帆は急に声を掛けられ足を止めた。
「私、一階の柳田です。ポストに挨拶の品が入ってて、ありがとうございますねー」
「いいえ、よろしくお願いします」
夏帆は丁寧に頭をさげた。
「成瀬さん、どちらからの異動?」
「青森です」
「今度、お話聞かせて! もしかしたらうちの主人、次はそこじゃないかって言われててさ」
「はい、私でよかったら」
「青森からだと、この辺のことわからないでしょう?」
「ええ、まだ何もわからなくて…」
すると周囲にいたママたちが、ぞろぞろと会話に参加し始めてきた。
「じゃあ安くて美味しい魚屋を教えてあげるわ。そこの市役所の通りにある魚王が断然いいわよ」
「なんでも揃えたいなら太陽マートよね」
「でも、特売品の数でいったらやっぱり……
次々に情報をくれるママたちに夏帆は顔を右へ左へと動かして話を聞いた。
結局、園バスが到着するまでママたちは夏帆に地元の紹介をしてくれたのだった。
その情報量は夏帆が覚えきれないほどであった。
(やっぱりママたちはすごい…。ネットで検索するより地元を知っている人の話のほうが分かりやすいな)
最後に夏帆は丁寧にお礼を言って官舎へ戻った。
そして、部屋につくとおもむろに買い物バックを手に持った。
(よしっ。さっそくおすすめのスーパーに買い出しに行くぞ)
もちろん、頭の中では柊慈の好きな献立を考えながら。
今日は柊慈の帰りが早く一緒に夕飯を作ることになった。
旅行先で買ってきた、かつお節で出汁を取ることにした。
水を沸騰させて火を止める。そこにカツオ節を入れて沈むのを待った。あとはそれを濾して出汁取り完了。
夏帆は小皿にとって味見をしてみる。
「うわあ。お出汁の味がすっごく出ている!」
夏帆が嬉しそうに目を丸くした。
続けて柊慈も味見する。
「かつお節も美味しいな」
思わず笑みがこぼれるほどだ。
食材を切りながら夏帆は今日あったことを柊慈に報告する。
「官舎のママたちにスーパーの情報をもらったの。買い出しに迷わなくて本当に助かった」
「そうか。よかったな」
柊慈はほっとした表情を見せた。
鹿児島は柊慈にとっても初上陸の地だ。そのため、生活に密着した情報は持ち合わせていない。だからそのような情報を提供してもらえるのはとても有難いことだった。
なぜなら慣れぬ地で生活をする夏帆の一助になるからだ。
「でも、なにか困ることがあれば遠慮しないで俺に相談してよ」
柊慈はレタスの包装を剥がしながら夏帆に言った。
「困ることなんてないよー」
夏帆は余裕の笑みを見せる。
それをみた柊慈は少し眉を下げて笑い返す。
「夏帆はがんばり屋さんだからな…」
「今、私は仕事もしてないのよ?がんばり過ぎることなんてないわよ。柊慈さんこそ、いつも私の心配しすぎだよ」
「それなら、おれも安心だけどな」
「それに私、毎日たくさんの愛情をもらってますから…」
夏帆が嬉しそうにチラッと横にいる柊慈を見上げる。
「それはお互いさまだから。いつも俺のためにありがとう」
レタスをむく手を止めて柊慈は夏帆に顔を向けて目をつむる。
夏帆はそれに気が付いて背伸びをして唇を合わせた。
「…夏帆…」
柊慈がうっとりした目で見つめてくる。
「ダメダメ。ご飯は作らないとね!」
とあっさり野菜切りに戻ってゆく夏帆。
「…うーん…」
拗ねる柊慈。
どうやら自制心は夏帆のほうが強かったらしい。
なんとか二人仲良く新生活を始めることができた。
柊慈の心配をよそに、夏帆は鹿児島での生活に無理なく溶け込んでいけそうだった。
毎朝のルーティンのキスで夏帆は柊慈を見送った。
青森では仕事をしていた夏帆だが今日からは専業主婦となる。
自由時間が増えたといえばそうなのだが、この生活はすべて柊慈のために使いたいと夏帆は思っている。
疲れた柊慈が安心して帰れる、そしてほっとできる場所を提供することが自分の役割。
夏帆はそう理解していた。
「とりあえず、ゴミ掃除当番をしてきますか」
官舎のゴミステーションの掃除は交代制だ。今週は夏帆の番であった。
ほうきとチリ取りを手に持ちステーションに向かうと、その近くには幼稚園バスを待つ園児とママたちがいた。
(ちょうど登園の時間だ。懐かしいなー)
元気に走り回る園児をみて、夏帆は思わず微笑んでしまった。
そんな夏帆を見かけたあるママが声をかけてきた。
「もしかして成瀬さんですか?」
「は、はい」
夏帆は急に声を掛けられ足を止めた。
「私、一階の柳田です。ポストに挨拶の品が入ってて、ありがとうございますねー」
「いいえ、よろしくお願いします」
夏帆は丁寧に頭をさげた。
「成瀬さん、どちらからの異動?」
「青森です」
「今度、お話聞かせて! もしかしたらうちの主人、次はそこじゃないかって言われててさ」
「はい、私でよかったら」
「青森からだと、この辺のことわからないでしょう?」
「ええ、まだ何もわからなくて…」
すると周囲にいたママたちが、ぞろぞろと会話に参加し始めてきた。
「じゃあ安くて美味しい魚屋を教えてあげるわ。そこの市役所の通りにある魚王が断然いいわよ」
「なんでも揃えたいなら太陽マートよね」
「でも、特売品の数でいったらやっぱり……
次々に情報をくれるママたちに夏帆は顔を右へ左へと動かして話を聞いた。
結局、園バスが到着するまでママたちは夏帆に地元の紹介をしてくれたのだった。
その情報量は夏帆が覚えきれないほどであった。
(やっぱりママたちはすごい…。ネットで検索するより地元を知っている人の話のほうが分かりやすいな)
最後に夏帆は丁寧にお礼を言って官舎へ戻った。
そして、部屋につくとおもむろに買い物バックを手に持った。
(よしっ。さっそくおすすめのスーパーに買い出しに行くぞ)
もちろん、頭の中では柊慈の好きな献立を考えながら。
今日は柊慈の帰りが早く一緒に夕飯を作ることになった。
旅行先で買ってきた、かつお節で出汁を取ることにした。
水を沸騰させて火を止める。そこにカツオ節を入れて沈むのを待った。あとはそれを濾して出汁取り完了。
夏帆は小皿にとって味見をしてみる。
「うわあ。お出汁の味がすっごく出ている!」
夏帆が嬉しそうに目を丸くした。
続けて柊慈も味見する。
「かつお節も美味しいな」
思わず笑みがこぼれるほどだ。
食材を切りながら夏帆は今日あったことを柊慈に報告する。
「官舎のママたちにスーパーの情報をもらったの。買い出しに迷わなくて本当に助かった」
「そうか。よかったな」
柊慈はほっとした表情を見せた。
鹿児島は柊慈にとっても初上陸の地だ。そのため、生活に密着した情報は持ち合わせていない。だからそのような情報を提供してもらえるのはとても有難いことだった。
なぜなら慣れぬ地で生活をする夏帆の一助になるからだ。
「でも、なにか困ることがあれば遠慮しないで俺に相談してよ」
柊慈はレタスの包装を剥がしながら夏帆に言った。
「困ることなんてないよー」
夏帆は余裕の笑みを見せる。
それをみた柊慈は少し眉を下げて笑い返す。
「夏帆はがんばり屋さんだからな…」
「今、私は仕事もしてないのよ?がんばり過ぎることなんてないわよ。柊慈さんこそ、いつも私の心配しすぎだよ」
「それなら、おれも安心だけどな」
「それに私、毎日たくさんの愛情をもらってますから…」
夏帆が嬉しそうにチラッと横にいる柊慈を見上げる。
「それはお互いさまだから。いつも俺のためにありがとう」
レタスをむく手を止めて柊慈は夏帆に顔を向けて目をつむる。
夏帆はそれに気が付いて背伸びをして唇を合わせた。
「…夏帆…」
柊慈がうっとりした目で見つめてくる。
「ダメダメ。ご飯は作らないとね!」
とあっさり野菜切りに戻ってゆく夏帆。
「…うーん…」
拗ねる柊慈。
どうやら自制心は夏帆のほうが強かったらしい。
なんとか二人仲良く新生活を始めることができた。
柊慈の心配をよそに、夏帆は鹿児島での生活に無理なく溶け込んでいけそうだった。