勘違い一夜から始まる極甘策士なドクターの激愛婚〜偽装結婚は旦那様の甘い罠でした〜
「八影さんは、形成外科の製品を提案するのは初めて?」
「そうですね。この間まで脳外科の方を担当していたので」
「ああ、そういえば脳外の手術にも立ち会ったんだって? 八影さんくらいの年で、普通はそこまでさせてもらえないよ。社長に似て、ベテラン社員よりも仕事ができるんだなぁ」

 父を出しつつ私を褒める野島さん。彼はこうやって過度に褒めちぎることが多い。最初は純粋にうれしかったが、今はおそらくゴマすりの一種だろうと気づいている。

 悪い人ではないが、父に気に入られたい欲が顕著に表れている。最近営業部に異動してきた彼は、役職者への昇進をあきらめていないらしく、私によくしておけば自分の印象もよくなると踏んで、必要以上にいいことばかり言ってくるのだ。

 そしてそれが、時々嫌みのようになっていることに本人は気づいていない。こちらはいい気分にならないというのに。

 ちゃんと実力で評価してほしいんだけどな……と若干の不満を抱きつつ、「ありがとうございます」といつもの笑みを作っておいた。

 私の本心に気づいていない野島さんは、感心したような口調で話を変える。

「今の形成外科にはすごい先生がいるんだよ。若くしてスーパードクターと呼ばれてるらしい」

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